國崎出雲の事情(中編完結)

□私と愉快な仲間4
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舞台が終わるまで別室で待っていたはずがいつの間にか寝てしまっていたらしく春一さんが起こしに来てくれた。


暫くボーッとしていたが、何故かみんな勢揃いしていて目が覚めてしまった。
しかも、秀一郎くんに各務さんまで!!

ね、寝顔見られた…っ?秋彦さんや春一さんに見られるのは慣れたけど…大勢に見られるのは恥ずかしい




『……あれ、何でみんな居るの?舞台は?』




「終わったぜ!成功だ!」




どうやら無事に舞台は大成功したらしい。秀一郎くんも各務さんも打ち解けられやっと、本当の親子になれたんだね。




『お疲れさま出雲くん、梅樹くん。初日と成功おめでとう!』



「サンキュー」



「ふんっ…」




出雲くんもお化け克服出来たみたいだし
一件落着、で良いのかな?




「打ち上げ行くけど、もちろんちいも来るよな?」



『わ、私はいいよ…舞台に出てたわけでもないし手伝いしてたわけでもないから!』



「いーからいーから!秀一郎も来て欲しいよな?」




出雲くんセコい!私が秀一郎くんに甘いの知ってる癖に秀一郎くんに聞くんだもん…セコいじゃなくて狭いかな?




「ぼく、ちいとご飯食べたいな…ちいはぼくと一緒やだ?」



『よし、今すぐ仕度するから待っててね。』





「「「「「「即答かよっ!」」」」」」




だって、秀一郎くん可愛いんだもんっ!
即答するに決まってるじゃない!





『…お待たせ!』



「おせーよ女」



『秀一郎くん、手繋ごうか?』



「うん」



「てめー無視かごら!」





梅樹くん怖い…てゆか、私の名前知らないのかな?一回も呼んでくれた事ないよね




『梅樹くんって私の名前知らないの?』



「は?ナメんなよ…名前ぐらいし、知ってるし!」



『嘘だ!今、声が裏返ったからね!』



「うっせーな!てめーなんか女で十分だ!」



『……………』



「な、なんだよ…!」




『………出雲くん!梅樹くんが苛めてくるっ』






梅樹くんの横に居た出雲くんに助けを求めたら何故か紗英くんが梅樹くんをシバき始めた。

……………………ま、いっかな!





『…………何か不思議な感じですね』


「何が?」


『…だって、初めはお互い敵同士?だったのに今はこんなに仲良いなんて流石出雲くん』


「……確かにな」





私の言葉に苦笑いをする春一さん。出雲くんの周りには沢山の人が集まるのは才能もあるんだろうけど、人を惹きつける魅力があるが一番の理由だろう。



誰に対しても一生懸命で、真っ直ぐ自分を見失わずにいるからこそ見てる人を喜ばせ色んな人が集まる。







『…私、先に休みます。秀一郎くんまたね』



「またね、ちい」



「ちいもう行くのー?」



『うん、ちょっと…疲れちゃったから』





そっと客間を出る。そのまま部屋へ戻らずに外の空気を吸おうかなと玄関に向かう





「あの」



『……各務さん』




靴を履いている途中で各務さんが声をかけてきた。打ち上げは良いのかな?まさかまた仕事とか?




「…………有り難うございます」



『え?』



「…秀一郎の事です。あんな風に私に怒鳴りつけてきたのは貴方が初めてです。秀一郎もあんなに人に懐くのは珍しくて、あの日家に帰ってすぐ秀一郎に初めて怒鳴られました。」



『秀一郎くんに!?』




秀一郎くん、いつの間にそんな成長してたの!?てか、今日の出雲くん達の活躍ってあんまり意味なかったんじゃ…




「恥ずかしい話ですよね…息子に怒鳴られて初めて気が付くなんて……」



『恥ずかしい事なんて世の中には沢山あります。けど、各務さんのその恥ずかしい話は恥ずかしい内には入らないと思います。秀一郎くんが何て言うたか知りませんけど、良かったですね手遅れになる前に気付けて…はいこれ』



「これは?」



『秀一郎くんが見たがってた映画のチケットに決まってるじゃないですか。因みに日にちは明後日なんでちゃんと行ってあげてくださいね』






チケットを受け取った各務さんはポカンとした顔をしていたけど、多分私の気持ちは伝わったから明後日は秀一郎くんいっぱい楽しめると思う。





各務さんはまた頭を深く下げ、私にお礼を言い客間に戻っていった。







『…………良かったね、秀一郎くん』





あ、結局秀一郎くんが各務さんに私の事をどう言ったのか聞いてないや…いっか



その頃、客間に向う各務。手に握っているチケットを見つめながらあの日の秀一郎を思い出す




──お父さん…今度國崎屋に行ったときにちいにちゃんと謝ってよね──



──ちいは本当のぼくに気付いてくれた!ぼくみたいな奴のために泣いてくれたんだ!──



──ちいみたいな優しい人を悲しませるお父さんはキライ!──





「………まったく」





子供の成長は大人が思っているよりも早い。秀一郎が誰かの為にあんな必死になるなんて思わなかった。



いや、私が気付かなかっただけなのかもしれない。








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