國崎出雲の事情(中編完結)
□私と愉快な仲間7
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舞台が成功した次の日に無事に出雲くんは帰って来た。少し前までは八雲さんは灰のように真っ白で、加賀斗くんも家出したのは自分のせいだとか言い始めたから大変だった。
けど、出雲くんが帰ってきてから國崎屋はいつも通りの日常に戻った。
『加賀斗くん…あ、あのね……水着を買いに行くのに付き合って欲しいの!!』
「ぼくで良ければ」
と言うわけで私と加賀斗くんは水着を買いにデパートに来た。出雲くんも誘ったけど、オレは男だーって言いながらどこかに逃げて行ってしまった。
『……うわ…沢山あるね!』
隣にいる加賀斗くんはやっぱり女装をしている。
「どんなのがいいの?」
『あんまりフリフリのは好きじゃないかな』
「じゃあ、これは?」
加賀斗くんが手にしたのは凄く大人っぽい赤のビキニ。胸元には大きなリボンが付いている。
『私にはちょっと大人っぽくないかな?』
「試着してみなよー」
『え、あ、押さないで』
有無を言わせない笑顔で私を試着室に押し込まれた。仕方ない……着るか。
「ちい着たー?」
『う、うん…一応』
バサッとカーテンを開ける加賀斗くん。
少しぐらい躊躇いを持って欲しい。
サイズはピッタリだけど流石ビキニだ。
胸が嫌でも強調されてしまう。
「似合うじゃん!可愛いよ!」
『…そうかな……胸強調しすぎじゃない?』
「今の子はそのぐらいだよ?」
『派手じゃないかな?』
「ギャップがあって良いと思うよ」
加賀斗くんはどうしてもこの水着を私に買わせたいらしく物凄くキラキラしている。
『……これにしようかな……』
「やった!」
『じゃあ、着替えますね』
「あ、待って!」
カシャっとフラッシュにシャッター音。
『え、え、え!?』
「ちいの水着姿ゲット!」
『け、消して下さい!』
やだー、と言いながら携帯を持ち逃げ回る加賀斗くん。追いかけたいけどこの姿じゃ無理だ。
『加賀斗くんのばか!!』
仕方ないから着替えてから加賀斗くんを追いかける事にした。
結局、写真は消せずに今は帰り道だ。
「ちいちゃん、今日楽しかった?」
『うん、楽しかったよ!』
「良かった。最近、元気ないみたいだったから」
困ったように笑う加賀斗くん。
『………元気がないわけじゃないよ…ただね、気になる事があるの…』
「気になる事?」
『…あのね、出雲くんの舞台を見に行ってからなんか……紗英くんに避けられてる気がして…』
そう、最近紗英くんが可笑しい。
話しかけてもどこかに行ってしまったり電話やメールをしても出なかったり返信が来なかったりで避けられてるのだ
「何かあったの?例えば喧嘩とか?」
『思い当たらないから悩んでるんだよ』
「まあ、ちいに限って喧嘩はないよね」
『………私、無意識に紗英くんが傷つくようなことしちゃったのかな?』
もしそうなら謝りたい。紗英くんに避けられるとどうしても胸の奥が痛い。
「ちいってさ、紗英くんの事どう思うの?」
『え?普通…かな』
「具体的に!喋るとドキドキしたり避けられると胸が痛くなったりとか」
加賀斗くんに言われて今までの自分を思い返してみる。
『紗英くんにはいつも助けてもらってて気付いたら私の隣に居てくれて…でも嫌じゃないの!寧ろ安心するって言うか何かホッとするの……紗英くんが私の名前呼んでくれると少しドキッとする』
「避けられると?」
『胸の奥がキューって痛くなる。悲しいのか寂しいのかよく分かんないの…』
私がそう言えば加賀斗くんはニヤニヤしながら何か確信したような顔をしていた
『な、なに!?加賀斗くん何か分かったの!?』
「うん、分かりやすいから分かっちゃった」
『教えて?』
「だーめ!ちいが自分で気付かなきゃ意味ないもん」
気になる。加賀斗くんが分かって私が分からないなんて何だろう?
結局、何度訪ねても加賀斗くんは教えてはくれなかった。その日はモヤモヤとした気分のまま終わった。
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