國崎出雲の事情(中編完結)
□私と愉快な仲間8
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「なぁ、ちいちゃんどうしちゃったんだよ」コソッ
「昨日帰ってきてからあんな調子なんだよ」コソッ
トントンとリズムよく包丁で料理しているちいだが、途中でカランと包丁を落とした。
『…………………いたいっ』
「大変だー!救急箱!」
『あ、八雲さん。』
「大丈夫?痛くない?いや、痛いよね!」
異常に心配してくる八雲さんをボーッと見つめる。痛いはずの指先は痛みがない
こんな小さな痛いより紗英くんに拒否られた心の方が凄く痛かった。
「何かあったのか?昨日帰ってきてからボーッとしてばっかじゃないか」
『…………心が……』
「ん?」
『心が焼けるように痛いんです。どうしようもないぐらい好きなのに伝わらないんです。』
切れた指先を見つめて昨日の事を思い出す。あの後、みんなの所に戻ったら紗英くんは何もなかった様に出雲くんとじゃれ合っていた。
「ちいちゃん?」
『……すいません、今日調子が良くないみたいなので夕飯の時間まで部屋で寝てます』
いきなり訳の分からないこと言われたら八雲さんだって困るよね。
「すすすす好きって…!」
「落ち着いて下さいおじさん。」
「だって今ちいちゃんが!」
鼻水と涙を大量に流しながら八雲は秋彦の肩をゆさゆさと揺さぶる。
「ちいちゃんに彼氏が居たなんて知らなかったな」
「ば……秋彦!!」
「しまったっ……!」
「…ちいちゃんに彼氏……」
ピキッとヒビが入った音がした。春一と秋彦はやってしまったと呆れた顔をする
「にしても、本当に何があったんだ?」
春一はちいの部屋の方を見て呟いた。
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