私は戦国武将。
□朝稽古
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「はっ…!」
早朝。まだ朝靄の絶えない林の中…。
袖をたくし上げ、長い髪を一本に纏め、少女は一人、刀を振るっている。
それが最近の彼女の日課なのだ。
朝稽古の相手は、高い木の枝に吊された四尺ほどの藁人形。
きつく束ねられたであろうその表面は、刀傷でずたずただった。
「はぁっ…はぁ…。…っ!!」
ひとたび呼吸を整えると、再び刀を振り上げる。
肩から腰、足の付け根から爪先まで細い身体。
一体その身体の何処に、真剣を振るえる力があるのか。
「はっ……は………。!?」
一瞬、眩しい光に驚き、足を止めた。木漏れ日だ。
…日もだいぶ出てきたし、風も吹いている。
(…そろそろ戻るか。皆に見つかってしまっては面倒だ)
パチンと刀を鞘におさめると、城へ戻るべく歩き出す。
(…いや、待て)
もう少し…もう一太刀、振るってみるのも悪くない。
そう思い返し、くるりと人型藁のある方向に向き直る。