私は戦国武将。

□最上の手紙
1ページ/2ページ

高い頂の上に聳え建つ霧谷の堅城、″万里城″。



周りにあるのは、断崖絶壁の崖や目の前を覆う緑。



厳しい自然に囲まれた、何者をも寄せ付けない城故えに、『万里をゆくより過酷な城』と言われている。



その呼び名も、我らの誇り。



人に媚びない。人に屈しない。人を寄せ付けない。



我ら霧谷の掟…。



が、しかし。それが覆された。



天下分け目の戦い。それが起こる前に。



我ら霧谷は、関ヶ原の戦いの前に徳川と同盟を結び、史上初めて他者に下った。



『何故です爺様!!』



私はそう叫んで、爺様に反抗したな…。



『納得ができません…徳川と手を結ぶ…!?本気で仰っているのですか!』



『あぁそうじゃ。儂はそれでいいと思うとる』



『我が霧谷の掟をお忘れか!…よもやこの咲めが、お力添えできぬと…?』



自分の力の無さを感じていない訳ではなかった。



いくら鍛錬を積んだとて、屈強な兵たちに力では到底及ばない。



「所詮は女」と、半ば馬鹿にされ、苦汁を舐め続けてきたのだ。 



故に、爺様の言葉が深く刺さった。



『まぁそう答えを急くな。儂は充分お前も、儂について来てくれとる家臣も信頼しとる』



『ならば何故…!!』



『……』



『…お答え、出来ぬのですか…!?』



『…もうこの話は終いだ。下がれ』



そう言って、爺様は私に背を向けた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ