私は戦国武将。
□最上の手紙
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高い頂の上に聳え建つ霧谷の堅城、″万里城″。
周りにあるのは、断崖絶壁の崖や目の前を覆う緑。
厳しい自然に囲まれた、何者をも寄せ付けない城故えに、『万里をゆくより過酷な城』と言われている。
その呼び名も、我らの誇り。
人に媚びない。人に屈しない。人を寄せ付けない。
我ら霧谷の掟…。
が、しかし。それが覆された。
天下分け目の戦い。それが起こる前に。
我ら霧谷は、関ヶ原の戦いの前に徳川と同盟を結び、史上初めて他者に下った。
『何故です爺様!!』
私はそう叫んで、爺様に反抗したな…。
『納得ができません…徳川と手を結ぶ…!?本気で仰っているのですか!』
『あぁそうじゃ。儂はそれでいいと思うとる』
『我が霧谷の掟をお忘れか!…よもやこの咲めが、お力添えできぬと…?』
自分の力の無さを感じていない訳ではなかった。
いくら鍛錬を積んだとて、屈強な兵たちに力では到底及ばない。
「所詮は女」と、半ば馬鹿にされ、苦汁を舐め続けてきたのだ。
故に、爺様の言葉が深く刺さった。
『まぁそう答えを急くな。儂は充分お前も、儂について来てくれとる家臣も信頼しとる』
『ならば何故…!!』
『……』
『…お答え、出来ぬのですか…!?』
『…もうこの話は終いだ。下がれ』
そう言って、爺様は私に背を向けた。