私は戦国武将。
□朝稽古
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そう思い返し、くるりと人型藁のある方向に向き直る。
ざりっ……。
足を開き、軽く腰を曲げ、前のめりの体制となる。
小さく息を吐き出し、余計な力を取り除く。
そして………風が止んだ、その刹那。
シパンッッ!!!
一筋の閃光が見えたかと思うと、少女は木の向こう側に立っていた。
その右手には、何時抜いたのか刀が握られている。
ゆっくりと足を運びながら、光を放つ刀身を鞘の中へと戻していく。
「抜撃……菖蒲アヤメ」
ぱちっと刀がおさまった瞬間。
けたたましい音を立て、太い樹木が二つに割け、倒れた。
抜撃。
それは、眼にも止まらぬ“居合”だ。
「…」
倒れた木の切り口を見て、少女は小さくため息をついた。
(まだ、こんなものか。…より精進し、霧谷の名に恥じぬようにせねば…)
あれやこれやと悩んでいると、
「……」
微弱ながら、人の気配を感じた。
「……そこに居るのは解る。姿を現せ、壬吉」