私は戦国武将。
□最上の手紙
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「…様、咲様…?」
「…」
「咲様!」
「!」
大声が耳に届く。不意をつかれたように肩が動いた。
「いかがなされました、咲様…」
見ると、自分の目の前には側近や家臣が並んでいた。
誰もが不思議そうに私の顔色をうかがっている。
「気分でも害されましたか?」
「い、いや、気にするな。大事無い」
みなに不安を与えぬよう、慌てて姿勢を正す。
…何を惚けているのだ私は…。
「では、話を戻させていただきます。咲様、これを…」
一人がそう言いながら、恭しくそれを差し出した。
「…文か?」
「左様で御座います。最上の者より、貰い受けもうした」
長細く折られたそれには『風神殿』と書かれている。
その文字に、ぴくりとこめかみが動いた。
(…爺様の死も、父上のことも、あやつらは知らんのか…)
「ふん。最上の情報網も、たかが知れるというものだ…」
言い捨てると、冷たい眼差しで文を読み始めた。
“前略、霧谷定幸殿。
先の関ヶ原では、家康クンも吾が輩も世話になった。感謝しているよ。
〜中略〜
…で、吾が輩とて一人の紳士。礼をしたいと思っていてね。
この度其方へ足を運ぼうと思っているのだよ。
と、言うわけで、玄米茶と手厚い待遇の準備をしていて待っておきたまえ。
日ノ本一紳士な最上義明”