万金魚屋

□場所は寂れた商店街
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商店街の一角で
――
平成23年 鷹匠

「赤い鳥 小鳥
何故、何故 赤い」

商店街で1人の男の歌が静かに響
いた。
もの売りにしては、格好が派手、
話し屋にしては浮き世離れした着
物を纏い、下駄を履いた白い白い
髪をした男が静かに歌っていた。
ひやかしはいない。
そもそも、商店街は夜のせいか不
気味なほど静かだ。
そうして人様の視線などに構いも
せず、間に煙管を挟みながら静か
に歌い続けるのだ。
鷹匠にある光の大半は、バーや居
酒屋であった。
商店街も古いから、店も古いのだ
ろう。現に蜂鳥の店もかなりの年
期だ。商店街の辺りに点在する神
社から聞こえる小さなお囃子。僅
かに流れてきた風が運んできた匂
い。パンチ焼きだろうか?
そんな時に蜂鳥の店の黒電話がけ
たたましく鳴り、蜂鳥を呼んだ。
慌てふためき、店の番台に行き、
出れば――

「わかった」

従業員、否、息子たちからで、蜂
鳥は番傘と紙束を手に店を後にし
た。
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