ミナクシ 2

□はじまりの恋
2ページ/36ページ

今日は私の婚儀の日。
思わず大きなため息を吐いてしまった。

渦潮の里の自分の部屋で過ごすのも今日で最後か。
私は自室を見渡した。
もう殆ど何もない。
全て友人にあげてしまった。
嫁ぎ先に何も持って行かないと決めていた。

この身ひとつで嫁ぐのだ。

木の葉の里に嫁ぐ。
これは私が生まれてまもなく決まったこと。
私のチャクラが九尾を押さえ込むために必要だと分かったから。

政略結婚。

結婚相手は次期火影。
同じ年の波風ミナト。
若干二十歳にして、世界に名前をとどろかせている天才忍者。

私も何度か彼とは戦場で会ったことがある。
確かに彼の才能は素晴らしかった。

忍の才能だけではなく人望もある。
それは彼と彼の周りを見ていればすぐに分かることだった。

それに彼の外見!
美青年とは彼のことを言うのだと思う。
初めて見たときは、まだお互い子供だったけど彼の綺麗な顔に思わず見とれてしまったのだ。
私はもう一度、ため息を吐いた。

婚儀は今夜、渦影立ち会いの元、渦潮の里で行われる。

もう波風ミナトは到着しているはずだが、会いに行く気はない。
どうせ、これから彼と暮らすことになるのだから。

その時、部屋の扉がノックされた。

「はい」

私は椅子から立ちあがり、扉の方までと言った。
幼なじみのクサナギだろうか?

もしかして、もう婚儀の準備を始めろと言うのだろうか?
気が進まない。
でも、自分の義務は分かっているつもりだ。

扉をゆっくりと開ける。
そこにいたのは金髪の青年。

波風ミナト。

私は彼を見て、一瞬呆けて、それから一歩後退ってしまった。
どうして、彼がここに?

ここは渦影邸。
他里の人間はどんな理由があっても入邸は許さない。
渦潮の里の暗部達も警護しているはずだ。

そんな中、この波風ミナトは簡単に入って来たのだ。
彼の実力は間違いなく本物だ。
息を飲む。

「……どうして、ここに?」

私は低い声で訪ねた。
そして、波風ミナトから視線を逸らす。

「ん、君の姿が見えなかったから気になってね」

それだけの理由でわざわざこんなところまで来たのか。

「そう」

私はそれだけ言った。

「……あまり嬉しそうな顔じゃないね」

私は波風ミナトの言葉に怒りをおぼえて睨んだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ