ミナクシ 2

□太陽王と戦姫
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長らく続いていた戦争が終わった。
たくさんの国が戦争に巻き込まれ、大勢の人が死んだ。

その戦争をある大国の王が終わらせた。

木の葉国の若き国王。
その王は太陽王と呼ばれていた。

私は大きく気を吐く。
平和になったのが未だに信じられない。
血なまぐさい日常だったなんて嘘のようだ。

「ちょっと、辛気くさいため息なんかしないでよ」

異母妹のオトが私に言った。

「クシナは今まで闘っていたから、平和にはなれていないのよ」

バカにしたように異母姉のタチハが笑いながら言った。
私は肩を竦める。

私たち3人は渦の国から木の葉の国に向かっていた。
木の葉国国王の年頃の娘が木の葉国王へ会いに行っているのだ。
親交のために荷馬車で1週間もかけて。

「……どうして、私まで」

私はもう一度ため息を吐いた。
オトは19歳で渦の国の正妻の娘。
タチハは21歳で渦の国王家の娘の中で一番美人。

なのに、私は母の身分が低く、姫とは呼ばれることはなかった。
私が出来ることは戦場で闘うことだけ。

「私はクシナがいてくれて嬉しいけど」

「ま、確かに。クシナはあまり私たちと一緒にいてくれないからね」

オトとタチハが続けて言う。
私は驚いて年の近い2人の異母姉妹を見つめてしまった。

確かに私は姉妹達と一緒にいることはなかった。
剣術を学んだり、戦法を学んだりしているから。
他の姉妹はこんなことはしていない。

私は戦争中、ずっと戦場にいたし。

「……タケルもクシナのことを会いたがっていたわよ」

オトガ言った。
私はタケルの名前が出て、目を見開いてしまった。
渦の国王家はオンナばかりが生まれた後、やっと皇太子となるオトコの子が生まれた。
それがタケル王子だ。
今年で7歳になる。

「タケル……大きくなったでしょうね?」

私はオトに聞き返してしまう。
タケルはオトの同母弟になる。

「大きくなっているわよ。早く大きくなってクシナを守るんだっていつも騒いでいるんだから」

「え?」

私は首を傾げた。
タケルが私を守る?

「ほら、3年くらい前にタケルの暗殺未遂があったじゃない。その時、タケルを守ったのはクシナだった」

タチハは笑いながら言う。

私はそのことを思い出す。
たまたま不審者を見つけたのが私だったとだけの話だ。

「クシナ、あの時大けがしたのに。忘れるなんて信じられない!」

呆れたようにオトも続ける。
タケルを庇って背中を剣で斬られたのだ。
今も大きな傷が背中に残っている。

私は思わず肩を撫でていた。
戦姫と呼ばれている自分には相応しい傷だと思い気にしたことはなかった。
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