ミナクシ 2

□君がいる世界
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秋風が頬を擽る。

山の木々は紅葉している。
この季節が俺は一番好きだ。
静かに彩っていく木々を見るのは心が和む。

この木々のように彩が移り変わっていっても俺とクシナの関係は続いていくモノと疑ってもいなかった。
アカデミーの頃はそんなに親しくはなかったけど、俺は初めてクシナを知ったときから彼女のことが気になっていた。
勝ち気なクシナを見守っている自分に酔っていたのかもしれない。

初めて彼女を見たときから確信があった。
俺は彼女と出会うために生まれてきたのだと。
当時はまだ子供だったから、上手く説明出来なかったけど。
いつかクシナも俺を見てくれると信じていた。

アカデミーを卒業して暫く経った頃、クシナが曇の忍に誘拐された。
俺はその時のことをよく覚えていない。
とにかくクシナを助けなければと、それしか考えていなかった。

夢中でクシナを助けた。
当時、俺はまだ下忍で相手が全員曇の里の上忍だったことなんて知らなかった。
それほどクシナを助けることに夢中だった。

誘拐事件のあと、俺はクシナと親しくなった。
彼女が俺に笑顔を向けてくれるようになったのが嬉しかった。
やっと、クシナが俺のことを見てくれるようになったと浮かれていた。

15歳になったとき、俺はクシナに告白した。
クシナも俺と同じ気持ちだと信じて疑わなかった。

『ごめん……私、ミナトとは付き合えないってばね』

クシナは凄く困った表情を浮かべて俺に言った。
俺は頭が真っ白になった。
まさか断られるなんて思ってもいなかった。


✽✽✽✽✽


そんなことを思い出しながら俺は任務帰り報告書を提出して家路へと歩いていた。

あれから2年が経つ。

クシナに振られても俺は彼女のことが好きだった。
どうして断られたのか分からなかった。

クシナは俺のことが好きなはずなのに。

だって、クシナが心を許してくれているのは俺だけだったから。
俺だけに心から微笑んでくれる。
それは間違いなかった。

初めて出会った頃と俺の気持ちは変わらない。
今だって俺はクシナに出会うために生まれてきたのだと思っている。

クシナに振られてからが地獄だった。
彼女が俺を避け始めたから。

今、思い出しても心が痛む。
クシナから避けられるのは精神的に辛いモノがあった。

そんな時期が半年ほど続いた。
だけど、俺が他のくノ一と話しているとクシナはそれまで俺を避けていたのが嘘のように普通に話し掛けてきた。

俺が1人の時、または男友達といるときは話し掛けてはこない。
つまり、俺が他のくノ一と話していると嫉妬してくれているのだと思った。

でも、違った。
クシナは俺が他のオンナと一緒にいると友達として接してくれているのだ。
それは俺を他のオンナと付き合ってもらいたいからだった。

そのことに気がついた時は愕然とした。
まさか、クシナにとって俺の気持ちが本当に迷惑だったなんて思ってもいなかった。
15歳でクシナがまだオトコと付き合うとこに心の決心がついていないだけだと思っていたから。

それから俺の地獄が始まった。
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