ミナクシ 2

□クロスロード
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クシナは俯いて俺に言った。

「私達、少し距離を置いた方がいいってばね……」

俺はクシナの言葉に目の前が真っ暗になってしまった。

最近、彼女が俺に対して何か言いたいことがあるのは分かっていた。
俺との付き合いで悩んでいるのも知っていた。

でも、まさか、こんなことを言われてしまうなんて。

俺たちは16歳のころから正式に付き合い初めて、今年で2年。
18歳になって、将来のことも俺は考え始めていたのに。

「ちょっと、待って! クシナ!」

俺は慌ててクシナに言った。
でも、クシナは俯いたまま、俺を見ようとはしない。

クシナが凄く悩んで、俺に言ったことは分かっている。
でも、了承なんて出来ない。

別れ話ではないけど……別れを告げられているようで、呼吸さえも上手く出来ないでいた。

俺は自分に落ちつけと言い聞かせる。

ここで冷静に対処しないと本当にクシナと別れなければいけなくなってしまう。
それだけは絶対に嫌だ。

ずっと、クシナのことが好きだった。
付き合い初めて、その想いは強まる一方。

クシナと別れるなんて選択肢は俺にはない。

「……俺のことが嫌いになった?」

俺は一応、聞いた。
心は有り得ないほど動揺している。

そのことを悟られないように、俺は必死に平常を装っていた。

「嫌いになるはずないってばね!」

クシナはやっと顔を上げて、大きな声で叫ぶように言った。

彼女の返答を聞いて、俺は安堵の息を吐いた。

クシナが俺のことを嫌いになっていないことを分かっていた。
でも、確かめたかった。

クシナの口から直接聞きたかったのだ。

「ん……なら、どうして?」

安心したら、少しだけ落ちついてクシナに聞いた。
なんとかクシナの気持ちを変えたかった。

本当はクシナがどうして距離を置きたいなんて言ったのは分かっていた。
それでもクシナの口から本心を聞きたかった。

クシナは俺の言葉を聞いて、また俯いてしまった。
口を開こうとはしない。

重たい沈黙が続く。

「クシナ? いきなりそんなことを言われたら……俺、どうしていいか分からないよ?」

責める口調にならないように、俺は精一杯優しく語りかける。
クシナが大きく深呼吸をしているのが分かった。

「……だって、ミナト。無理しているでしょう?」

やっと発したクシナの言葉に、俺は一瞬身体が硬直してしまった。

「まさか、無理なんてしてないよ」

俺はクシナを安心させるように微笑みながら嘘を吐いた。
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