ミナクシ 2
□愛の言葉
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ミナトと付き合い始めて3年。
今年で私たちは19歳になった。
「クシナ、どうかした?」
ミナトが私の顔を覗き込んで尋ねてきた。
私は慌てて笑みを浮かべる。
久しぶりのデート。
里の大通りを歩いて、お茶をして。
他愛もない会話をしているときだった。
「ううん。どうもしないってばね。どうして?」
内心焦りながらも私はミナトに聞き返してしまった。
私が今、悩んでいることがある。
もちろん、悩みの種はミナト。
本人には絶対に言えないけど。
だって、ミナトが悪いわけではない。
私が勝手に落ち込んでいるだけだから。
「ん、なんか最近考え込んでいることが多いから……」
ミナトは私を気遣いながらも答える。
「そんなことないってばね。ミナト、考え過ぎ」
私は笑いながら言った。
すると、ミナトは「それならいいんだ」と言って、私に笑顔を返してくれる。
それ以上は尋ねない。
それがミナトの優しさだと知っている。
ミナトの微笑み。
私の一番好きなミナトの顔。
思わず泣きたくなってしまいそうだった。
✽✽✽✽✽
夕方になり、ミナトと食事をして私たちは岐路に着いた。
いつも通り、ミナトが私の自宅に送ってくれる。
これが私たちのデートのカタチ。
私の家の前まで来て、ミナトが私の唇にキスを軽く落とした。
もちろん、周りに誰もいないことを確認して。
「ん、またね。クシナ」
ミナトはそう言って、帰って行く。
今日もそのパターンだった。
私は慌ててミナトの腕を掴んだ。
「ミナト、お茶でも飲んでいかないってばね?」
私は早口で捲し立てるように言った。
いつもとは違う私の行動にミナトは目を見開いていた。
本来なら、ここで、私も「またね」と返すだけだから。
ミナトは一瞬私から視線を逸らす。
それからまた笑顔を向けてきた。
「ん、ありがとう。でも、今夜は帰るよ」
ミナトの言葉に私は目の前が真っ黒になった。