ミナクシ 2
□Over True
2ページ/83ページ
最近、よく夢に見る。
少女の夢。
誰かは分からない。
会ったこともない少女。
でも、俺にとってとても大切な少女だということは分かる。
幻術に掛かっているように、現実ではないようだ感覚。
夢の中で、その少女を抱きしめると、いつも目が覚めてしまう。
✽✽✽✽✽
「ミナトのことが好きなの。私と付き合って下さい!」
目の前の少女を俺は静かに見つめていた。
冷静に彼女を分析している自分がいる。
黒髪の長い髪を一つに結い上げている。
頬を仄かに染めて、瞳は潤んでいた。
同期の男子達が可愛いと騒いでいたのも頷ける。
だけど、俺は彼女に引かれるモノは何もなかった。
心に反応しない。
「ん。……悪いけど、俺、君とは付き合えない」
俺は申し訳ない気持ちで言った。
……俺は彼女の名前さえ覚えてはいないのだから。
「……そう」
彼女は可愛らしい顔を辛そうな表情を浮かべて俯いた。
それから、彼女はその場から駆け出した。
俺は静かに彼女が去って行ったのを見つめていた。
俺はしばらくその場で佇んでいた。
その時、俺は気配がして驚いて振り返った。
「シビ」
俺は彼の名前を呼んだ。
木の影から、シビは静かに姿を現す。
「……ミナト」
あまり多くを語ろうとはしない友人。
きっと、彼なりに何か思うことがあるのだろう。
「あまり、悩まなくもいい」
シビはそれだけ言った。
彼が俺を気遣っているのが分かる。
とても優しいのだ。
俺は彼の優しさに甘えたくなった。
辛い心の中を吐露してしまう。
「……俺、どっかおかしいのかな?」
ずっと思っていたことだった。
木の葉の里の友人、仲間はとても大切だと思う。
だけど、特別な女性は出来ない。
作ろうとさえ思えない。
心に欠陥があるのだろうか?
ずっと思っていた。
俺はどこか普通ではないのだろう。
友人たちがそんな俺は心配してくれいるのも知っている。
先ほどの少女も可愛いとは思う。
だけど、好きにはなれないと実感した。
それでも彼女と付き合うのは悪い気がしたのだ。
「……まだ、出会っていないだけだ」
シビは静かに呟くように言った。
俺は友人に儚く笑った。
笑うしかなかった。