ミナクシ 2

□ボンビーガール 3
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やはり申し訳なくてお金はいらないとミナトに申し出た。
ミナトと少しでも対等になりたいと思ったから。

でも、ミナトは家事をして働いているのだからちゃんと給料は受け取るようにと笑顔で一蹴されてしまった。
それ以来、ミナトは私がその話を持ち出すと不機嫌になるので言えなくなったのだ。

これでは雇用主と従業員の関係になってしまう。
それが、私は嫌だと感じるのだけどミナトはそうではないのだろうか?
……怖くて聞けないけど。

そんな生活の中、私のミナトへの気持ちは大きくなっていくばかりだった。


✽✽✽✽✽


3月末。
年度末の忙しい時期。

あと少しで仕事もひと段落が付くというとき、ミナトが2週間の海外出張に出かけた。
3か月以上も一緒に暮らしていて、こんなに会わないでいるのは初めてだった。

ミナトの家に帰ってもミナトがいないと落ち着かない。
大きな家でひとりは凄くさびしかった。

料理もミナトがいないとする気がなくなる。
私はミナトのことが好きだから家事を頑張ってしまうのだと改めて感じていた。

ミナトに会いたい。
気が付けば、ミナトのことばかり考えている私がいた。


✽✽✽✽✽


「渦巻さん、最近元気ないみたいだけど大丈夫?」

職場のミサコ先輩に声をかけられて私はハッとした。
今夜が職場での飲み会。
送別会がちょっと高級な居酒屋で開かれていた。

貧乏な私だけど社会人としての最低限の務めとして忘年会と歓送迎会だけは出席するようにしている。
私が所属している部署からも異動があったのでこの会が開かれたのだ。

「えっと、久しぶりにお酒を飲んで頭がぼーっとなっちゃいました」

私は苦笑しながらも答えた。
ミサコ先輩は私の返答にプッと吹き出す。
部署で私と一番親しい女性の先輩で仕事でもお世話になっている人だった。

ミサコ先輩は頭の回転が速く仕事も出来て性格も良い。
その上、美人。

私はミサコ先輩を尊敬していていた。
いつか私もミサコ先輩みたいになりたいと思う。
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