ミナクシ 2

□気が付けば恋の季節
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会社の同僚であるヨシノに大事な話があると休憩室にこっそりと呼び出されたのは秋になった頃だった。

「合コン?」

私は思わず声を上げてしまった。

「クシナ、声が大きい!」

ヨシノは人差し指で自分の唇を抑えている。
私は両手で口を押えた。
今はまだ業務中なのだ。

「……ごめん」

私は謝る。
唐突に変なことを言いだすヨシノも悪いと私は視線を送った。
いきなり呼び出すから何事かと思ったら合コンだなんて。

「だって、ヨシノが変なことを言うからだってばね!」

私は小声で反論する。
大事な話があるというから、仕事の手を止めて来たのに。

今までヨシノには合コンは誘われたことなんてなかった。
ヨシノ自身に彼氏がいて、合コンに行く必要がなかったからなのだけど。

「ヨシノ、彼氏はどうしたの?」

私は伺うように尋ねた。
ヨシノとはずっと親しくしているけど、別れたなんて聞いていない。
だから、ヨシノから合コンの話をされて驚いてしまったのだ。

彼氏がいる身でヨシノは合コンに行くような性格ではないことは私が良く知っている。
なので、不審に思ってしまったのだ。

「私と彼が幹事をするの。でも、女の子が集まらなくて……クシナが来てくれると嬉しんだけど。お願い! クシナ、今、彼氏がいないでしょう?」

ヨシノは苦笑しながらも言った。
付き合っている彼氏はいないけど。
今だけではなく、ずっと。

「?」

私は首を傾げてしまった。
ヨシノは友人が多い。

だから人が集まらないというのは嘘だと直感した。
そんな私の思いに気が付いたのか、ヨシノは私に向かって懇願するように手を合わせた。

「え? 何?」

ヨシノから一歩後退りながら言った。

「良い子を連れてくるって言っちゃったの! だから、お願い!」

切羽詰まっているのかヨシノは必死だった。

「彼の職場の人に変な子紹介出来ないし。クシナだったら、性格良いし、顔だって可愛いし。その場の空気を悪くすること絶対にないから。ね? お願い!」

ヨシノが続けた。
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