ミナクシ 2

□思はれ人
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それは一か月ぶりにミナトに会った時のことだった。

「は?」

私は思わず聞き返してしまっていた。
ミナトはニコニコといつものように微笑んでいる。
頭が真っ白になってしまっていた。

今、ミナトはなんて言った?
目を見開いて私はミナトを凝視してしまっていた。

「だから、一緒に暮らそうよ」

当然のことのようにミナトは続けた。
私はパニックになりながらも、取りあえず頭の中を必死に整理する。

「ん、クシナ。この紅茶美味しいね。アッサム?」

ミナトは私が出した紅茶を美味しそうに飲でいる。
凄く落ち着いているようだ。

ミナトの問いに私は咄嗟に答えることなんて出来ない。
それどころではない。

ちょっとだけ、私はミナトに苛立ってしまう。
私はこんなにも混乱しているというのに!

待って。
どうして、そんな話になったんだっけ??

ミナトが任務から帰ってきて、その足で私の家に来てくれた。
付き合い始めて、もう3年。
今年で私たちは20歳。

確かに周りでは恋人と一緒に暮らしている友人も何人かいる。
それが、普通のことなのかもしれないけど。

先ほどまではミナトと任務や季節の話などをしていたのに。
とても和やかに。
……今もミナトは和やかだけど。

任務で怪我したかった、とか。
寒いね、とか。
でも確実に春に向かっているね、とか。
梅の花見は出来なくて残念だった、とか。

取り留めのない、普段の私達らしい会話だったはず。

それがどうして一緒に暮らそうとミナトが言ったのか分からない。
そんな会話のあとにミナトにいきなり言われたのだ。
まるで何かを思い出したように。

『そうだ、クシナ。俺たち、一緒に暮らそうよ』

かなり唐突だった。
会話の流れではなかった。
ミナトらしくなかった気がした。

『は?』

……私が間抜けな声を出してしまっても仕方がないと思う。

私には男性と一緒に暮らすということに抵抗があった。
チラリと私はミナトを盗み見る。
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