ミナクシ 2

□花束を君に
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スマホのアラーム音で俺は目が覚めた。
音を止めて、伸びをする。

それからベッドから起きてカーテンを開けた。
シャーっと音がする。

部屋に朝日が差し込む。
眩しい。
4月も下旬に入り、新緑が綺麗な季節になっていた。

今日も一日が始まる。

脱衣所に顔を洗いに行くとお隣さんがキッチンを使っている微かな気配がした。
思わず笑みが零れてしまうのと泊められなかった。
一気に俺の足取りが軽くなった気がした。

俺は今年で社会人2年目。
後輩も出来、仕事も俄然楽しくなってきていた。
遣り甲斐もある。

今の会社に勤められて良かったと心から感じる。
凄く自分には合っている会社だった。

顔を洗ってからキッチンに置いていた電気ケルトにミネラルウォーターを入れてのスイッチを押す。
そしてトースターに食パンをセットして焼き始める。

ホッと息を吐く。
この習慣は学生時代から変わらない。

俺はこのマンションに学生時代から住んでいる。
いかにも単身用の1K。

玄関に入って直ぐの廊下にキッチン。
反対側にはバス・トイレ。

本当は社会人なり仕事に慣れたら引っ越そうと漠然と考えていた。
でも、引っ越すことはなかった。
今のところ引っ越す予定はない。

それは去年の春にお隣に引っ越してきた女性が大いに関係している。
彼女がマンションのお隣に暮らし始めて丸1年が経過してしまった。

初めて彼女を見かけたのは去年の3月。
年度末の最後の日曜日だった。

前日にお隣さんが引っ越しをしていたことはなんとなく気配で察していた。
でも俺は学生最後の長期休暇を遊び過ぎてしまっていた。

4月からは俺も社会人。
しっかりと疲れを取ってから会社に行かなくては。
流石に最後の土日はゆっくりと部屋で過ごそうと決めてゴロゴロしていた。

日曜日のお昼過ぎ。
インターフォンが鳴った。

そこにいたのがお隣に引っ越してきた渦巻クシナさんだった。
丁寧に引っ越しの挨拶に来てくれた。

俺は彼女に一目惚れしてしまったのだ。

あまりにも渦巻さんが綺麗で、俺は殆ど口がきけなかった。
彼女は赤く長い髪がとても印象的で。
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