お礼文

□《番外編@》クシナ視点
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4月。
大学生になって私は憧れのイタリア語を履修した。
第二外国語は絶対にイタリア語にしようと決めていた。

初めてのイタリア語の授業が始まる直前、講堂がざわついた。
何が起こったのかと私は講堂を見渡す。
そこには凄く格好良い人がいた。

講堂内がざわめくのも分かる。
私も感嘆の声を漏らしてしまった。
あんなイケメン、初めて見た。

ずっと見ていると不審がられてしまうと、私は視線を手元の教科書に戻す。
落ち着かない気持ちで教科書をパラパラと捲る。

それから、やっぱり彼が気になって私はチラリと振り返った。

「っ!」

イケメンの彼がこちらを見ていた。
目があった。
時間が止まったような感覚。
私は静かに視線を戻す。
必死で不自然にならないように。

一瞬息が止まるかと思った。
心臓がバクバクと言っている。

まさか、目が合うとは思っていなかった。
イケメンがこちらを見ていたとは。

だけど、正面からあのイケメンを見る事が出来た。
ちょっと距離はあったけど、彼の素敵さに圧倒されしまった。

あんな素敵な人が現実にいるんだと思った。
本当に格好良い。

モテるんだろうなぁ。
彼女はいるかな?

いるよね。
あんなにイケメンなんだから。
今だって女の子の視線は彼に釘付けになっているし。

この大学に入るために、私は高校時代必死で勉強した。
だから恋愛なんてしている時間なんてなかったのだ。

大学生になったら、素敵な恋をしよう。
そう思っていたのに。

現実は甘くない。
素敵な人には必ず可愛い彼女がいるのだから。
私は溜め息を吐いてしまった。

講堂に教授が入室してきた。
私は授業に集中しようと、教壇へと意識を向けた。

イケメンに現を抜かすためにイタリア語の授業を履修したわけではない。
イタリア語を絶対に身に付けるのだ。

高校の時から独学で学んではいたけど、イタリア語は面白かった。
先生が興味を惹くような授業をするからだった。
ますますイタリアが好きになってしまった。
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