ミナクシ

□スイートハート
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仕事中に俺は社長室へと呼ばれた。
大企業と言われている会社なので、そんなに社長室に来ることはない。

俺は入社して6年目。
主任に昇進して仕事に遣り甲斐を感じて楽しくなってきた。

仕事は順調だ。
社長室に呼び出されるようなミスはしていないハズと俺は思いながらも社長室があるフロアへと入っていく。
役員室があるのでちょっと居心地が悪い。

まず、扉の前の電話で秘書室に内線を入れる。
この扉は外からは開かないのだ。

「企画開発部の波風です」

「はい。今、扉を開けます」

内線の受話器を置く前に、扉が自動で開く。
俺は深呼吸をしてから扉の中へと入って行った。

大会社の役員フロアということだけあって凄く豪華な内装だ。

「お待ちしておりました。社長がお待ちです」

第一社長秘書の団扇ミコトが俺へと一礼した。
俺は思わず眉を潜める。
同期にこんな風にされるのは違和感がある。

彼女は楽しんでいるようで、必死で笑いを堪えているようだ。

「ん、何の話か聞いている?」

俺は社長室へと案内してくれているミコトに小声で聞いた。

「大丈夫よ。ミナトにとって悪い話ではないわ」

ミコトも小声で答えた。
彼女がそう言うなら間違いないだろう。

俺は息を吐いてしまった。

ミコトに案内された社長室。
そこには三代目社長である猿飛ヒルゼンが書類に向かって仕事をしているようだった。

「社長、波風です。お呼びでしょうか?」

俺は一礼してから、言った。

「おお、待っておった。コーヒーを持って来てくれ」

社長をミコトにそう言ってから、俺を近くにあるソファーへと座るように指示をした。
そう言えば、社長と二人きりで話すのは初めてだ。

ミコトはコーヒーを用意していたようで、すぐに持って戻って来た。
彼女は機転が利く。
だからこの若さで社長第一秘書にまで上り詰めたのだろうと改めて感じた。

「もうすぐ大きな人事異動が行われる」

「え?」

俺は社長の言葉に驚きを隠せなかった。
今は4月。
それなのにこれから大移動?

「今の時代、先を見据えて動かないと社会は容赦ないからのぅ」

確かに社長が言うことは尤もだ。

「それで、お主に海外支店を任せようと思う」

「……はい?」

俺は失礼を承知で聞き返してしまっていた。
会社を任せる?
まだ27歳である俺に?

年齢的にまだ早い。

「お主、海外で育ったそうだな?」

「はい。父の仕事の関係で15歳までイギリスで過ごしました」
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