ミッシング・ハート

□プロローグ
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闇。闇。闇──。
『彼』の周りは、すべてが闇だった。
一片の光も宿さぬ精粋な闇。
音の存在を許さぬ無音の闇。
永遠の闇が統べる、何も存在しない世界。
その世界の中心を『彼』は漂っていた。
(……ここは? オレは、いつからここに居る?)
ふと『彼』は思う。
何十、何百年だった気もするし、ほんの数秒だった気もする。
そんなことを考えた瞬間、
(……ッ!?)
頭に痛みが走った。
激痛だ。
痛み以外のことは、何も考えられないほどの……。
(くぅッ!)
反射的に頭を押さえる。
(うわあぁぁぁぁーッ!!)
絶叫。
声帯が裂けるほどの声で叫ぶ。
だが、その悲痛な声は闇に吸い込まれ、音として機能しなかった……。
 

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