君との証を

□8契り
4ページ/4ページ







「……っいや!!忘れてくれ!!悪かっ「いないよ」


「ホラ土方さんなんて足元にも………は?」


は?


いない?


「い、ないって……っそ、そんなわけないだろ!?じゃあその腹はどうだってんだよ!!」


「……ああ。ちょっと違うな。いないんじゃなくて、いなくなった」


いなくなった?


ってことは、こいつとこいつとのガキの前から?




まさかそいつ、





「……孕ましたのを恐れて、逃げ出したってことか」




今度こそ底知れぬ怒りが湧き上がり、食いしばった間から呻きのようなそれが漏れる。


くそ、あの時こいつを監禁してしまえばよかった。



泣いて狂っても離さずに留め置けば。


いまごろこいつは―――





すると、そんな空気を敏感に感じ取ったのか銀時は大きく声を上げた。



「っ違う!!そいつは逃げたんじゃないんだ。…………ただ俺がいけなかっただけで」


最後のひとことは聞こえるか聞こえないかのささやき。


「…俺がそいつと釣り合わなかったんだよ。だから許されなかったのは、当然」


こぼれだす言葉とは裏腹に、このうえなくやさしい手つきで腹を撫でる。何度も、何度も。


くらくらする。



「でも、こいつをおろすなんてできっこないから」





「……おろせって…相手の男に言われたんですかぃ」


総悟の目が鋭く光る。


一度姉を結婚させた身としては、そういったことは許せないのだろう。



「…うーん…まぁ、そういうことになるのかなぁ……」



曖昧に微笑む銀時。


だが俺にはそれで十分。


「そんな男の子ども、よく産む気になれるな」


そんな奴なんかより自分の方がよっぽど大事にしてやれる。幸せにしてやれる。



つーか、何様だよ。



「……産むよ」


今まででいちばん切ない声で答えた銀時。


それを向けられているのは名も知らない奴のはずなのに、なんでか胸が締め付けられた。





「だってさ、そいつは俺のこと好きじゃないけど」



―――そんな声出すな。



「俺は、そいつが大好きなんだよ」




―――――胸がひどく痛む。






「そいつの子だから、産むんだ」









―――――――なんで、微笑むんだよ。






もう、限界だ。





「……邪魔したな」


「え、土方!?」


「ちょっ……姐さん、また来やす!」







後先考えずずかずか歩きだすと、総aもすぐに追いついてきた。…今日は何かとコイツを引っぱりまわしてるな。



「ったく、なんなんですかぃあんたは。ガキじゃねぇんだ、もう少し我慢してくだせぇよ」


「…………」



ついでに説教もされてるな……マヨネーズでも降るのだろか。




「………頭、冷やしてくる」



一言つぶやけば、へいへいとあっさり総aは退散していった。







「どーすっかなー……」


とか言いつつも、冷やす頭も吹き飛ぶくらい俺の頭は爆発寸前だ。





――幸せな顔が見たい、


と、離れ離れになっているとき何度も願った。



でも違う。




俺が





俺自身がお前を幸せにしてやりたいんだよ―――………















………もう二度と叶うことのない彼の想い。




それは、ひっそりと押し殺された。





  




























  
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ