君との証を
□9契り
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絶対戻ってきてくださいね一時間したら帰ってきて下さいよまちがっても木刀振り回さないでくださいねっっっ!!!と、新八に死ぬほど念を押されて万事屋を出てきた。
「ちょっとでもやばかったらすぐに電話するんですよ!!」
「銀ちゃん、おめー糖分摂りすぎるなヨ!!団子屋に行くのもしばらくは禁止ネ!!」
「行かねーよ!!ちょっと出るだけっつたろーが!!」
……こんなふうに叫ぶほうが悪影響じゃね?
…まぁ……たしかに俺も赤ん坊は大事だが……
新八といい神楽といいお妙といい、かぶき町のみんなはなかなかに過保護だ。
こんなあからさまに心配されることなんてそうそう無いから、ちょっと切り返しに戸惑ってしまう。
カンカンカン、と思ったより軽快に階段を降りて………さて、どこへ向かおう。
えーっと……お妙のところは…ゴリラへの制裁に巻き込まれそうだな……
一階のババァは妊娠にかこつけて変な借りつくっちまうかもだし……
ヅラ、ヅラかぁ………赤ちゃんへの悪影響はなるたけ少ない方がいい。というか、バカがうつりそうだ。
長谷川さん……………あの人に至ってはどこにいるのかもわからない。
他に行くところといえば…――――
「屯所……………」
無意識に声に出してしまい、慌てて両手でふさぐ。
いやいやねぇよ。大体何しに行くんだ。
それになんて説明したらいいんだろう。バカ正直に話したら、今までの苦労は全部パーだ。
でもなぁ………
話さなくていいはずなのに、なんでか胸が酷く痛む。
とりあえず、散歩がてら団子屋に行くかな。
一歩踏み出して、また立ち止まる。
「つらいのもわかりやすが、ちゃんと………って、どこいくんですかぃアンタ」
細い路地を抜けたところで、前よりも大人びた声が耳に飛び込む。
そして、自分に背を向けている真っ黒な男。
さっきさんざん戒めたくせに、顔を見たいがあまり、つい、
「………多串くんに、沖田くん…?」
声、を。
説明、けじめ、話し合い…―――
――ううん、じゃなくて、
ただ、会いたかった。