魔法少女デビルサマナー 葛葉ライドウ対初元の男女
□葛葉ライドウ
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時代は大正二十年。和の文化に刺激的な洋の文化が流入し急速に発展した時代。
そんな発展した日常の裏には今尚理から外れし異形……物ノ怪(もののけ)。嘗ては信仰され畏怖されていた古(いにしえ)の神々、天使、悪魔。これら異形の者共を総じて『悪魔』と呼ばれていた。
その『悪魔』と交渉し召喚と使役と戦いを生業とする者………それを『悪魔召喚師(デビルサマナー)』と呼ぶ。
“帝都”国の最重要拠点にして最も新しい物が集まる場所。
だがそこには旧と新が入れ混ざり、表面上は煌びやかな街だが裏は混沌として『悪魔』が現れる異界でもある。
だが、それらの脅威から国を………人々を護るヤタガラスに仕えし守護者が存在した。
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帝都………筑土町を黒い学服に黒の学帽、身に纏う黒い外套を揺らしながら駆ける1人の青少年に1匹の黒い猫がいた。
一見彼等は何やら急いでいる書生に見えるが、それは違った。
その外套が翻る度に覗く腰に隠された一振りの刀に一丁の拳銃。
だがそれよりも異質な物………それは学服の上に革で出来ている装具が巻かれ左右の腋から脇腹に掛けて細長い物………管と思われし筒が納められていた。
それこそがデビルサマナーの悪魔を封じている入れ物である。
その管は左右十ずつ。計二十になる。即ち二十体にも及ぶ悪魔を所持しているという意味である。
走る書生。
その書生から逃げるように大工の格好をした男が慌てて悲鳴を上げながら逃走している。
だが常に命を懸けて闘争の世界に身を晒している書生………『葛葉ライドウ』にとってランニングにすら届かない。
大工は必死に逃げているからか自分が何処を走っているのか分かっていないようだ。
曲がり角を曲がって逃げようと前を向いて……大工が走るのを止めた。
大工の前には壁があった。ライドウにより上手く袋小路に追い詰められたのだ。
流石探偵(擬き)である。
《もう逃げられぬぞ観念しろ》
黒猫……『業斗童子』のゴウトがデビルサマナーか悪魔にしか聞こえないのに言う。
ライドウはゴウトの横に立って懐に手を伸ばす。
大工は周りを見回して何処かからか逃げられないか必死に探して………突如身体を震わせ始める。
《むっこれは手遅れか……もう少し発見が早ければ助けられたのだがな》
悲しそうにゴウトは呟く。
そんな1人と一匹?の目の前で大工は身体を折り曲げ………その首の後ろから皮膚を突き破って赤い触手が生えた。
次から次へと赤い触手が至る場所から生え、硬質化し、赤い甲殻へと変わる。
顔を完全に覆い、背から甲殻で出来た赤い翼を生やし、腕を鋭い鉤爪が煌めく。