混合夢小説

□trick6
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夜 6:00 空座町

A・Tで周囲の人にバレない様にバイト先に向かっている名無しさん。
(一応、石の王のあたしがここらへんで走ってる情報が流れると面倒くさいことになるかもしれないからね。用心しなきゃ。)
勿論、用心する人間は自分の玉璽を狙うライダーや○風Gメンも含まれる。しかも新旧牙の王も戻ったので検挙率もうなぎ登りだ。

そうして幾つかのビルを越えて『植木屋』まで、後3分程の所。あまり街灯がない道路でそれは起きた。

あるビルの上にある看板の近くに大きな白い手が現れ、看板と繋がっている鉄柱を薙ぎ倒した…様に見えた。そして看板が下に落ちていく。その看板の落下地点に女性がいたことに気が付き、咄嗟に体が動いていた。

「!!っまずい!!」
(看板があの人に落ちるまで後3秒!!)
最初の2秒でその人物の10m前まで近づき、次の1秒でその人物を抱き抱えそこから飛び退いた。
?「きゃあっ!」
ドオオォォォン!!
煙が沸き上がる中、近くに降りようとした時に煙埃の風の流れが何となくおかしい気がした後、さっきの白い腕がこちら目がけて襲ってきた。
「石よ…!!」
そう言うと同時に近くの小石を手にし、それを白い腕に触れさせる。その時、腕が小刻みに揺れて動きが『石』の様に固まった。
今、名無しさんがした事は、小石を媒介にして伝わる水晶振動周波(クリスタル・クウォーツ)の原理を応用した振動波、大地の道を走る者が得意とする攻撃だ。
そして腕を止まらせ、手の甲の部分を足場にし、もう一度振動波を右足で発動させてから左足でここから離れる為に強く踏み込む。そして、手の甲が砕かれた。
?2《ギャオオォッン!!》
その時に人間のものではない声がした。
(やっぱりここから早く離れよう。)
「ごめんなさい。少し飛ばすわね。」
?「へ、あ、きゃあ!」
そう言い、かなりの速さで少し離れた広場へ向かった。


「ふう。えと、大丈夫?
ごめんなさい、あんなに飛ばしちゃって。」
放心状態だったその女性もその声に気が付き、

?「あ!大丈夫です。助けてもらってありがとうございました。いや〜本当に看板に潰されそうでした〜。」
そう言って顔を下げる彼女に
「本当に間に合ってよかった。それとそんなに顔下げないで。」
?「あ、はい。」
そして顔を上げた彼女は見たことのある顔だったので目を見開いた。
少し赤が入った茶髪に青い六花のヘアピンをつけた巨乳美女とも呼べる美少女。(えーと、隣のクラスの井上さんだっけ?)
ちなみに名無しさんはゴーグルを着けているので、織姫は彼女の驚いた表情に気がつかなかった。
そして織姫も自分を助けた人物を見て驚いた。
織(足に履いてるのA・Tだよね。あれであんなに速い動きしたのかな?年は私より少し上かな?)
名無しさんの服装はいつものA・Tにジーンズ、作業がしやすいチェックの上着にシンプルなインナーだった。
「よかったら家まで送って行こうか?私の足ならすぐに着くし。」
織「あ、大丈夫です。私の家、すぐそこのアパートなんで。」
そうして笑う織姫につい可愛いと思ってしまった名無しさん。
(後で誰か女の子の所に行こうかな。」
「そっか。じゃあ気を付けてね。」
織「え、あのお礼したいので良かったら家に来ませんか?」
「ごめんなさい。これから用事があるの。」
織「そうですか…。あの、もし見掛けたら声と掛けてもいいですか?」
「勿論よ。」
織「よかった。じゃあその時にお礼させていただきます。本当にありがとうございました。」
そうしてペコッとお辞儀をして帰っていく織姫に、
「別にお礼は…って、もういないし。あ、こけた。大丈夫じゃかな、井上さん。・・・ヤバイ間に合わない!!」
そうして全速力で『植木屋』に向かって行った。

「こ、こんばんは。」
潤「ギリギリなんて珍しい。何かあったのかい?」
「いえ、プチ人助けしてました。すぐに準備します。」
尋ねる暇もなく準備を始めてしまった名無しさんを見て、また後で聞こうと自分も準備にかかる潤だった。

     P.M8:30  『植木屋』
潤「よし。今日は終了!」
「お疲れ様でした。」
潤「お疲れ。さてと、名無しさんちゃんここに来る時何があったの?」
「だからプチ人助けですって。まあ吃驚しましたけど。」
潤「ただの人助けで君があんなに焦った顔しないでしょ。ほれ、言ってみなさい。楽になるよ。」
「楽になるって、警察の常套文句じゃないですか。・・・人助けの内容が落下してきた看板が落ちる前にそこにいた人をギリギリの所で助けただけですよ。それでその人が同じ学校の子だったんで、驚いただけです。」
潤「・・・プチってどころでは無いね。怪我は無いの?」
「はい、お互い無傷ですっ!!」
潤「そう。気をつけてね。眉唾ものだと思ったけど、情報でこの頃空座町周辺、何か超常現象ばっかり起こってるから。」
「うわ。変な事言わないで下さいよ。」
心あたりがありすぎたのでつい顔を歪めてしまう。
潤「ま、そういうこと。どうする?滉君に来て貰うかい?」
「子供扱いしないで下さい。それに滉もペットショップのバイト凄く楽しそうにやってるんですから。」
潤「確かに彼にとって天職だからね。動物関係は。」
小鳥は勿論、犬や猫、前に動物園に行った時に脱走したライオンを懐かせてしまったほどの動物好きの滉だ。あの時はさすがにどうしようかと思った。
「はい。だからこんな事で迎えに来てもらうとかは在り得ないですよ。じゃあ、そろそろ上がらせてもらいます。」
そうして二階に行ってしまった名無しさんを見て、ため息をつく潤であった。
潤「全く。もう少し自分のことを過大評価してもいいのにね。」
そして自分も今日の精算をしはじめたのだった。
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