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□嫌よ、嫌よも
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「坊、襲いますえ。」
眼前に広がるのは見慣れた天井とド派手なピンクめいた茶髪。
それは俺の恋人の志摩廉造。
人一倍エロくて、四六時中俺を抱きたいと騒いではこうやって俺を押し倒す。
だが一度もコイツが本懐を遂げたことはない。
「お前には無理や。」
「なんでですか?」
「ヘタレ、やからや。」
志摩はヘタレだからか優しさか、俺が嫌や、と言えば絶対にしない。
いくら本人が欲情していようと、俺の一言ですぐに止めてくれる。
それは俺をほんまに愛してくれてるから、そう思うのだが。
「そうですね……。」
そう言って志摩は俺の上から退く。
俺は素直ではないと自覚している。
だから嫌じゃない時もつい嫌、と言ってしまうこともある。
それを志摩に分かってもらおうなんて自分勝手なことは思わない。
だけども俺から求めるなんてやっぱり無理で…、
「志摩……、」
不器用な俺は志摩の服の裾を引っ張ることくらいしかできない。
「なんどす?」
「嫌よ嫌よも好きのうちって…知っとるか?」
「…坊っ!」
それだけで志摩は理解したのかさっきと同じように俺を押し倒した。
眼前に広がるのはやっぱりさっきと同じピンクで。
「やっぱ嫌や。」
「ぼっ、坊!?」
「ははっ、嘘やって。」
end