群雄繚乱

□狂華演舞
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時は少し遡り、斎藤が土岐氏を追放してすぐの事…




稲葉山城の庭にて二人の童子が遊んでいた。
どちらも年はまだ10歳以下だろう。



「あ…待ってください帰蝶。全く、君は走るのが速すぎる。」


「光秀が遅いのが悪いの。ほら、早くしないとまた逃げちゃう。」



どうやら帰蝶と光秀は追いかけっこでもしているらしい。





「平和な事ですね。道三殿。」


「全く。幼子は元気で良い。」


道三とその家臣が縁側でくつろいでいた。
道三の横に座る家臣は明智の人間で、土岐氏滅亡後、道三の所に身を寄せていた。










庭の奥、道三達から見えぬ所では、光秀と帰蝶が蝶を追いかけていた。


「捕まえたわ!!」

少し息を切らした帰蝶の手には綺麗な蝶が捕まっていた。


「綺麗ですね。帰蝶。」


「ええ。」


今、この幼い童子たちは「蝶狩り」という遊びに夢中であった。
帰蝶考案であるが、6月から7月にかけ蝶が舞う稲葉山では、うってつけの遊戯だ。




帰蝶が蝶の羽を持ったまま、近くの蜘蛛の巣に絡み付ける。


「…また、殺してしまうのですか?」


少年は声を小さくして言う。



「だって…光秀も綺麗なの、みたいでしょう?」

帰蝶は当たり前のように言う。


稲葉山周辺の蝶は紅い燐分がある。蝶が死に際羽を散らす際にはそれが美しい紅となり辺りに舞うのだ。


二人は蝶を狩ることよりも寧ろ、蝶が死ぬときに見せるこの紅の方に魅せられてしまっていた。





しばらくして蜘蛛が巣に絡んだ蝶に気づき、捕食し始めた。


舞い散る紅と、消え逝く蝶に二人は魅せられ続けた…
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