日和

□その花の
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その日は私の誕生日だった。
「プレゼント・・・これなんだけど、」
藤田に渡されたのは赤い花束。
買いに行くには勇気が要っただろうな、と客観的な感想が出てくるくらいには驚いていた。
「花の名前、何ていうの?」
「・・・アネモネ」
うつむいた藤田の小さな声で呟かれた意味を、私は知りたくなった。

とりあえず手っ取り早いのはネットだ。
その日のうちに調べることにした。
早くしなければ枯れてしまう、その前に。
「アネモネ・・・あった」
“彼女”に花束なんて、藤田も意外とキザなところがあるものだ。
受け取った方もなんだか照れくさい。
花は自室の花瓶に飾った。
「・・・花言葉?」
ページのリンクをクリックしてみると、アネモネの画像と共に、アネモネに関する情報が出てきた。

はかない恋
恋の苦しみ
薄れゆく希望
清純無垢
無邪気
辛抱
待望
期待
可能性

「……」
キザというよりはメルヘンチック、だ。
読んでいて自分でも顔が熱くなってくる。
下へスクロールしていると、アネモネには色別に花言葉があるらしく、白・紫・赤の三項目があった。

「っ…これは…」
白 真実・真心
紫 あなたを信じて待つ
赤 君を愛す


明日、藤田に会ったら何を言おうか。
そういえばお礼を言い忘れていた。
顔を見て言えるだろうか。
少なくとも、今みたいな顔じゃだめだ。


明日がこんなにも待ち遠しい。

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