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□【森月宮】方向音痴
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「はーい、方向音痴の人の特徴その1。意外と頑固&思い込みが激しい・『あれ? 間違えたかも』と思っても、やっぱり着きそうな気がして戻らない・道を間違えた気がしても、折り返すことでさらに間違えそうな気がするからとりあえずそのまま行く。」

ん?どう伊月君。
そう笑顔で楽しそうに聞いてくる森山さんの顔がまともに見れない。
更にそれとは逆側からのこちらも素敵な笑顔でいるだろう人物のほうも迂闊に見ることができずに結局俯いてしまう。

「その2。意外と生真面目 ・『まっすぐ進んで』と説明された道がゆるやかにカーブしている時点で、『まっすぐな道なんてないじゃないか』と思いもうわからなくなる。
これはただの馬鹿だよなぁ伊月。まさかこんな屁理屈考えて歩いてないよな?」

全く目が笑っていない宮地さんからのその質問に対して背中に冷たい汗が流れるのを感じる。
身に覚えがありすぎる…。

「その3。そもそも自分で道を覚えようとしない・同行者がいるとき、しかも頼れそうな人の場合には、ちゃんと自分で地図も見てこない。何も考えず、周りを見ず、おしゃべりしていることなどもある・『○○通り』とか、当たり前に知っていて良い大きな通りの名も、日常の中で知らないままスルーする。だから、『○○通り』と説明されると、最初から思考停止&その場ではわかった顔をして聞いておく。(それをきっかけに○○ 通りを覚えようとは思わない) 」

まぁこれは大丈夫だよね。いつもちゃんと地図確認してるし。
まぁそれで迷うのが謎なんだけどねー。

そんな言葉が続いていよいよ顔が上げられなくなってしまった。
だって、好きで迷ってるわけじゃないのに。

「その4。意外と疑り深い・『100メートルくらい行ってから右折』などの説明に対し、『ホントに100メートル!? こんなに歩いたのに、まだまっすぐでいいの?』などと不安になってしまい、勝手に曲がったりする。
これさっきと変わんなくねぇ?」

ってか何番まであるんだよこれ。面倒くせぇ、まとめて轢くぞ。

ついに物騒な言葉まで出てきて思わず目がうるんでしまったのを実感した。
怖い。というか、涙は不可抗力。
そんなことを心の中で唱えながらなんとか平常心を保とうと努力してみる。

「はい、その5−。意外とせっかち ・意味不明のところでショートカットし、迷う・なぜか確信を持って、率先して逆方向に進む・看板など をよく見ずに、正面玄関でなく裏口から入ってしまったり、関係者以外立ち入り禁止のところにうっかり入ったり、混んでいるエレベーターを待てずに非常階段を上がったりする。」

せっかちではないよね?
あのね、ちゃんと大通りを歩いたら大抵どこへでも行けるんだよ。

そんなことを言いながら森山さんの手が頭に触れるのを感じる。
ぽんぽん、と撫でられたことに顔を上げると優しく微笑んでいる顔が見えて、耐えていた涙が溢れ出してしまう。

1度流れ出してしまったらなかなか止まらないことぐらい自分が1番よくわかっている。
しゃくりあげながらも流れている涙を何とかしようとしきりに目を擦っていると横からのびてきた手に手首を捉えられ代わりにタオルで目元を優しく拭われる。

その手をたどっていくと先ほどとは違い苦笑を浮かべた宮地さんの顔が見えもう1度涙の膜が決壊してしまう。

「…っふぇ、ご、めん…なさい…」

その様子に二人は軽くため息を吐いた後、頭を大きな手で撫でつける。

「だからね、1つだけ約束。」

森山さんが目の前に指を1本立てて悪戯っぽく微笑む。
その言葉を受け継ぐように今度は宮地さんが口を開く。

「迷ったらすぐに俺たちに連絡すること。勝手に動くんじゃねぇぞ。」

その言葉に涙の流れたまま何度も頷くと正面から抱きしめられたので、そのまま甘えて広くてたくましい胸を借りてみる。


怒られて、泣いて、甘えて。
一気にいろいろなことがあったが、方向音痴も嫌なことばかりじゃないと気づいたある日の正午。


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方向音痴な伊月くんって可愛いよねって話。

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