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□杖(ステッキ)と踵(ヒール)
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(穏やかな日だな)
そう思って、シエルは目の前の町並みを眺めた。
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今日の予定は、と尋ねて返ってきた答えに、シエルは目を瞬かせた。
「は?」
「ですから、本日は御予定はございません」
朝食の席で放たれた言葉は、にわかに信じ難いものだった。当たり前だ。ここ一ヶ月ほど休みなどなかったのだから。
えんび服をまとった執事が苦笑する。
「戸惑っておられるようですね」
「・・・あまりに久々でな」
「存分に体を労ってください。ティータイムには、坊ちゃんのお好きなケーキをご用意するつもりです」
セバスチャンの言葉に生返事を返しながら、改めて実感する。
(今日は休みか)
一度目を伏せたシエルは、ふとその視線を執事の方にやった。
「暇だ」
セバスチャンは、にっこりと微笑んだ。