鮮血とコイと人助け。 書物
□第二話
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<第二話> 妖館Welcome
・・・お風呂入って寝ようと言ったけれど、ここって大浴場なかったか?
どうせなら風呂にはゆっくり入りたい。
八号室の上の階が大浴場だから、別に行ってみてもいいかな〜?
更衣室へ入ると、私以外の人影が見えた。
・・・なんで今日はこんなにも人に会いやすいのだろう。
まあ、大浴場は妖館の入居者ならば誰でも無料で使えるからいてもおかしくはないか・・・。
とりあえず声をかけられたら話せばいいか・・・?
「ん?・・・はっ、見ない顔だな、新入りか?ふん、僕は君と関わる気はないので今後一切話しかけないでもらおうか。」
黒髪パッツンにロングヘアーのちびっこがいた。
すごい悪態をついて。
だが、言っていることがおかしい。自分から話しかけておいて今後一切話すなって・・・。
・・・ん?
・・・あぁ、私と同じなのか・・・彼女も。
私が上辺を取り繕うことを選んだように、彼女は自然と悪態をついて人を遠ざけるようになったんだな。
ならば、彼女も私も、仲間だ。
「えぇ、本日引っ越して参りました。八号室の紅鬼院永久です。
何卒よろしくお願いしますね。」
ニコリと清楚にほほ笑んだ。
「ふんっ、先程話しかけるなと言ったばかりだろう。
四号室の白鬼院凜々蝶です。まあ社交辞令として宜しくくらいは言っておこうか?」
「凜々蝶・・・さん、いいのですよ・・・恐らく私と貴女は酷似した人生を歩んでいる。
だから貴方の気持ちはよくわかります。その、悪態の理由・・・とかね?」
凜々蝶は目を見開いた。そもそも先祖返りなんて大体こんな感じだ。
恵まれた人生を歩んでいる先祖返りなんてほとんどいない。
「な、なにを言っているのかわからんな。狂言も程々にしてもらおうか。」
「・・・私は人間不信になって・・・それ以来キャラを作ることで表面を取り繕いました。
貴方はそれが・・・悪態をつくという行為だったという・・・その違いだけです。
私も、人とどうやって関わっていいかわからないから、誰からも好かれるような振る舞いを心がけてるんです。
でもそこに、本当の友好関係なんて存在しない。・・・凜々蝶さんは、私との共通点、感じますか?」
・・・まあ自分も、人と関わりたくないとか言ってよく喋るな。
自分こそ、彼女に親近感がわいたのだろうか?
「僕と・・・同じ・・・?じゃ、じゃあ・・・君は、君の素は、もっと別にあるのか?」
「ふふ、まあそんなところですかね?」
一人は嫌いじゃない。でも、独りは好きじゃない。
孤独は、嫌だ・・・。全部の人が嫌いという訳ではないし。
”私と同じ”なら、”あいて”は助けてあげたいと思う。別に”じぶん”が変わる気はない。
とんだ自己犠牲・・・?まあ、いいのよ。こうやって生きてきたんだから。
「じゃ、じゃあ・・・僕には君の素で接してくれないかっ・・・僕も・・・悪態をついてしまわないように・・・
・・・って、何を言っているんだ僕はっ!!」
「・・・」
・・・可愛い。
「ふ、ふん。今のは冗談だ、気にするな。」
さっそく悪態ついてますけど大丈夫ですか?
「・・・そうね・・・よろしく頼むわ、凜々蝶」
私がそういうと、凜々蝶は顔を赤くし、背けた。
「ふん・・・よろしくしないこともなくもなくもない。」
回りくどいけど・・・可愛いから許すわ。
「ふふっ・・・凜々蝶は今から風呂なの?」
「あ、あぁ」
会ってすぐ、一緒にお風呂入りましょう♪なんて、妖館でやるとは思わなかった。
「じゃあ、一緒に入りましょう?」
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