鮮血とコイと人助け。 書物

□第一話
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「そうですか、わざわざ未来を視て引っ越してくるSSナシの住人の部屋の前に?

 手伝いにでもしに来てくださったんでしょうか・・・でも、心配なさらないでください。」



確か『百目』という妖怪は、過去未来、前世来世など人の情報が視えるのだったか?



彼は純血じゃなくて、先祖返りだ。だから、いつでもどこでも完璧に視ることは出来ないはず。



ならば、私の情報が視られることはない。それは、気高き吸血鬼の血の祝福があるからだ。



まあ、特別親しい仲になればその分視やすくなってしまうがまずありえないだろう。



「君は・・・」



「わざわざお気遣い痛み入ります。しかし、夏目さんは夏目さん個人の用を済ませてくださいませ。」



そう言って部屋に入ろうとする。



が、腕を掴まれた。



「やっぱり女の子だけじゃ大変だと思うよー。部屋に荷物あるんでしょ?

 片付けぐらい手伝うよー。」



―― 血ガ欲シイノ 喉渇イタ・・・ 夏目ノ血ヲ吸エバ良イ ――



「ッ!!!?」



腕を掴まれ、声をかけられた瞬間に、身体の内部から響くように私の声が聞こえた。



正しく言えば私じゃない。私の中の吸血鬼。これからはヴァンパイアと表記しよう。



そのヴァンパイアの声に驚いて、後ずさってしまったため、夏目には彼を避けた形になるだろう。



「ひっ・・・ひどい・・・ボク何もしてないのにっ・・・あっ、涙が・・・」



あからさまにハンカチを取り出して目元に添える。



「ご、ごめんなさいっ、そんなつもりじゃなくて・・・」



正直私はそれどころじゃないのだ。彼の傍にいたら発作が起こってしまうかもしれない。



私の意思じゃないにしても、血を口にするなんて考えただけで気色悪い。



「まっ、いいよ。んじゃそういうことでー 力仕事は男の仕事ってねー♪」



こ、断れない・・・。



なんでコイツ、理由もなく私に優しくするんだ?



私は何度目かの前世を血断ちしてからそれほど立っていない期間であれば、感じ取ることが出来た。



その中に彼の姿はなかったはずだ。といっても断片的にしか感じ取れないから断定はできない。



だが、私は妖館に来たのは多分今回が初めてだ。



あれ・・・?なんで前世と違う今を・・・?



ふと浮かんだ疑問。もしかして、それで夏目は・・・。おそらく彼は正確に前世を覚えているはずだ。



だが、前世(むかし)は前世(むかし)。現世(いま)は現世(いま)だ。



・・・気にすることは・・・ない、だろう。



「あーでも、女の子の部屋に男一人で上がるのってアレかな?♪」



・・・だが、いまいちコイツが掴めない。







「ふ・・・ぅ・・・終わったぁ・・・」



本当に、一人じゃ今日中に終わらなかったかもしれない・・・もう外くらいし・・・。



実はSSも悪くないのだろうか。



―― いや、やめておけ。発作が起きたら、SSである人を傷つけるかもしれない。



「お疲れ様♪今日はもう遅いからあれだけど、明日はみんなにあいさつするんだよー?

 じゃないと残夏お兄さんがお仕置きしちゃうぞ(はぁと」



「あ、えーと・・・はい。ありがとうございました。」



だからコイツは何者なんだっ・・・



「コーヒーと、軽いおやつみたいなの出しますね。手伝って頂いたお礼に。」



「あー、いいよいいよーボク作るから。」



What?今彼は何とおっしゃった?



「一番疲れているのは君でしょ?だから休んでて。」



「いやいや、でも・・・ここは私の部屋ですから、やらなきゃいけないのは当然の話だし・・・。

 それに、夏目さんのパートナーさんだっていらっしゃいますでしょう?」



彼は会ったとき、一号室の渡狸のSSだと言っていたはずだ。



「あーうん、平気。渡狸今修行中なんだよねーぷふっ修行だって修行。

 あ、なんで修行してるのかっていうのはー明日帰ってくる渡狸の前でねっ☆」



「修行・・・!?え、でも何故夏目さんは既に妖館に・・・。」



SSは、前にも言ったように護衛だ。



パートナーとそんなに簡単に離れるだろうか?





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