鮮血とコイと人助け。 書物

□第二話
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「僕も引っ越してきてからそれほどたっていないんだ。」



今は凜々蝶と大浴場の浴槽の中。



「奇遇ね。SSは?」



「・・・一応・・・いる。まあ、無理矢理といっても過言ではないがな!」



つまり、気に入っているのね。



「私は最初から断ったわ。守られる柄でもないし・・・。」



「・・・君も・・・強い種なのか・・・?」



君も・・・か。確かに白鬼院は鬼の血を引く家系だった気がする。



「まあ・・・そうね。少しめんどくさいけど・・・吸血鬼の先祖返りよ。」



まあ、鬼の親戚みたいな感じかしらねー。と付け足した。



「吸血鬼・・・」



「吸血鬼様の因子は凶暴で、変化しなくとも”鬼”に蝕まれてしまう。

 本当は・・・怖いのよ。いつ、私が他人の血を欲してしまうか・・・がね。」



・・・私は彼女に何を言っているんだ?



あれほど、人に気を許さないで生きてきたんだぞ?馬鹿な・・・。



「はっ、血を欲してしまおうが、君は君だ。何を怖がることがあるというのだ?

 ふん、僕もそろそろ逆上せてしまうからな。上がるぞ。」



そういって凜々蝶は立ち上がった。



血を、欲しても・・・私は、私・・・?



馬鹿な。ありえない・・・血を欲してしまったら、人でいられなくなる。



人でいられなくなったら、”私”じゃなくて”ヴァンパイア”になってしまう。



でも・・・。素直に凜々蝶の言葉がうれしかった。



凜々蝶は、私が血を求めても、私だと、言ってくれた・・・。



「・・・そう・・・ね、凜々蝶、ありがとう。」



「はっ、ボクはそういうつもりで言ったわけではないんだが?便利な思考回路だな。」



私は笑って、凜々蝶の後に続いた。







風呂の外には男女兼用の休憩所がある。



そこのベンチに凜々蝶と一緒に腰かけた。前方は窓で、綺麗な夜景が見える。



ちらりと凜々蝶を見ると、独りでにメールに対して顔を赤くしたり胸を抑えたり右往左往していた。



「・・・彼氏?」



「違うッ!!ただのSSだっ!!」



・・・うわ、即答。



本当に彼氏ではなさそうだが、気があるのは間違いないな。



すると突然、ガタッと音がした。自動販売機の音だ。



凜々蝶と共にその音の方向を見ると、金髪少年と目があった。



凜々蝶も初めて見る顔のようで、誰だかの判別は出来なかった。



しかし本当に今日はよく人に会う。



だが、お互いに何もしない形になってしまい、自然にじーっと見つめあっていた。



「・・・おい、お前ら何見てんだよ。」



「君が見ているからだろう。」



「ガンつけてんじゃねーよ 逸らせよ」



「・・・めんどくさ。」



ポツリ呟いて視線を夜景に戻した。



別に先に目を逸らそうが負けやしないよ・・・。



が、一分後。



「・・・っ、目がッ・・・」



「ふん、口ほどにもない奴だ・・・!!」



ずっと目線を逸らさず見つめあっていたようだ。



ちなみに勝者は凜々蝶。そこは素直に喜ぼう。



ていうかね、ずっと目線を逸らさず見つめあっていたなんてね、お熱いというより暑苦しいわ!



「さすがあの狐ヤローのパートナーだな!性格悪いぜ!!」



金髪少年は凜々蝶をびしっと指差した。



狐ヤロー・・・?あの御狐神家の先祖返りのことか・・・?



あのド変態の世話係だかなんだかやっていたと聞いたことが・・・。



「俺は一号室の住人渡狸卍里 不良だぜ!」



そして凜々蝶を指差していた指を自分に向けた。



・・・一号室の渡狸?どこかで聞いたような名だな・・・。



「不良って自己申告するものなのか。随分ご親切だな。

 四号室の、白鬼院凜々蝶です。」



「まったく同感ですが・・・あまりからかってあげない方がよろしいかと・・・。

 八号室の紅鬼院永久です。よろしく?」



すると渡狸はわなわなと震えだした。



「・・・ん?」



「おまえらも俺を馬鹿にしてんなっ 俺が・・・豆狸だからってーーー!!」



そしてどろんと、狸に変化した。



「か・・・可愛い・・・」



「・・・わざわざ変化してくれたのか。本当にご親切なことだ・・・」



狸はキーーーッと私らに牙をむく。



「うるせー 安定感なくて変わっちゃうだけだ悪りーか!!

 こんなナリだからって甘く見てると怪我すんぜ俺は不・・・」



凜々蝶は、狸の可愛さにそろ・・・と手を出していた。



「って何だその手は!!ヤキ入れんぞこの・・・」



「女の子に乱暴な言葉使わなーい☆」



が、何者かが狸のしっぽを思い切り握(りつぶした)った。





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