第一話【禁断】
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教室に戻ると、神原の姿は無かった。
裏庭か保健室にでもいるのだろうか。
俺はぼーっと七尾に熱い視線を送りながら、さっきまでのことを思い返していた。
ごめんね七尾……あんな煙草野郎に俺の初めてのキスを捧げてしまった……。
妄想の中の七尾は、それでも良いと言って俺にキスをしてくれる。
妄想してたら勃ってきた。
嗚呼なんて悲しい男、俺。
それにしても、キスってタバコの味がするのか……っていやいや、何考えてるんだそうじゃないだろ俺ぇぇぇぇえ!?
*
そして放課後になっても、俺の気持ちはどこかふわふわとしていた。
啓太はチャイムと同時に委員長の所へ行ってしまった。
これからは一人で下校か……。
寂しくなるな。
階段で一階に降りているところに、嫌な金髪が見えた。
ふわふわ思考の頭が『逃げろ』と命令する。
オーケー逃げるさ。
ただもう目が合ってしまったから動けないのさ。
逃げたら後が怖いからね。
さっきのキスを思いだし、一人で気まずい気持ちになる。
だが神原は俺を見るなりニヤッと笑った。
「キスくらい挨拶だろ? いちいち動揺すんなバカ」
「…………!」
――お父さん、お母さん、ごめんなさい。
俺はこの人の『奴隷』になってしまいました。