第六話【対象】

□1
1ページ/4ページ

 
「あれ、潮、それどしたの?」

「えっ?」

啓太が指をさしたのは、絆創膏の貼られた俺の胸元だった。



どっせええええええええええええええええええええい!!!



体育の時間、油断しきっていた俺は慌てて胸元を隠す。
いやあまりに違和感無いもんだから、すっかり忘れてた。

「あの……これは」

「?」

言うべきなんだろうか?

だって啓太、『手錠使ったら逆にかけ返された〜(笑)』とか、『玩具使ったら逆に使い返された〜(笑)』とか、聞いてもないのに逐一報告してくるし……。

でも俺が神原に虐められてると勘違いされて、神原と気まずくなったらどうしよう。
そもそも付き合ってるとかじゃないし。

「……って何アイツのことばっか考えてんだよおっ!」

「潮!?」

「あ、何でもない」



「ふ〜ん……で、それは?」

「……カミソリで引っ掻いた」

「痛ッッッ!!!」

結局嘘をついてしまった。
唯一無二の親友に。

だが、正直に言ったところで、この唯一無二の親友を失う可能性のほうが大きかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ