第六話【対象】
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「あれ、潮、それどしたの?」
「えっ?」
啓太が指をさしたのは、絆創膏の貼られた俺の胸元だった。
どっせええええええええええええええええええええい!!!
体育の時間、油断しきっていた俺は慌てて胸元を隠す。
いやあまりに違和感無いもんだから、すっかり忘れてた。
「あの……これは」
「?」
言うべきなんだろうか?
だって啓太、『手錠使ったら逆にかけ返された〜(笑)』とか、『玩具使ったら逆に使い返された〜(笑)』とか、聞いてもないのに逐一報告してくるし……。
でも俺が神原に虐められてると勘違いされて、神原と気まずくなったらどうしよう。
そもそも付き合ってるとかじゃないし。
「……って何アイツのことばっか考えてんだよおっ!」
「潮!?」
「あ、何でもない」
「ふ〜ん……で、それは?」
「……カミソリで引っ掻いた」
「痛ッッッ!!!」
結局嘘をついてしまった。
唯一無二の親友に。
だが、正直に言ったところで、この唯一無二の親友を失う可能性のほうが大きかった。