第九話【暗闇】

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その日から、神原の姿を全く学校で見かけなくなった。
神原を見かけた、という目撃情報もなかった。
だからといって、家に押しかける勇気は無かったヘタレな俺です。

「なぁ、最近神原と居ないけどどしたの?」

「……わからん」

「まさか、別れた?」

「うーん……多分」

「……まじ?」

啓太が今まで以上によく話しかけてくるようになった。
元気付けようとしてくれているのだろうか、だが話題は神原のことばかりなので少し苦しい。

「すげえ仲良かったのになー」

「仲良さそうに見えた?」

「うん、すごく」

「そ……っか。ところで啓太は委員長とどう?」

「んー? 相変わらず超仲良し!」

「一生付き合ってそうだな、お前ら」

「男同士だってこと以外に障害無いからねー」

「それが一番難しいことなんだけどな……」



そしてその日から、神原がいない、変わりに。



「――うしお」

「……ん」

授業中以外のほとんどの時間を、八尋と過ごす。
クリスマスが近くなった今日この頃、先のことを考えるとなんだか憂鬱だ。

「元気ない?」

お前のせいだろ! とは、言う元気が無かった。
というか、もう腐るほど言った。

「まーまー、元気ないときは食ってよ」

「……ども」

そう言って、弁当包みから二人分の弁当を取り出した。

いつもの空き教室で、二人きりの昼休み。
おそらく手作りの弁当。
甘やかされっぱなしの毎日。

そんな言葉だけを並べると、ああなんて理想の付き合いなんだろう、と思う。
それを素直に喜べないのは、相手が違うからだった。

だが最近、そんなことをいちいち考えるのも面倒になってしまった。
考えたって、どうにもならないことがこの世にはあるわけで。
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