第三話【嫉妬】
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「聞いてよ潮〜! 委員長……あっ笹部ってばデートの時も勉強勉強でさっ」
「うん」
「でもでも、最後はなんか照れててスッゴク可愛くて!」
「はは。つうかお前、そんなことでっかい声で言って大丈夫なのか?」
「大丈夫。笹部はカッコいい」
……ダメだこりゃ。
俺は今教室で啓太のノロケ話を延々と聞かされている。
どうやら、昨日初めて家デートしたんだとか。
あの俺が気絶している間にか、そーかそーか。
午後の授業、俺がいなかったことに関しては何も触れて来ないし。
まぁ俺はクラスでも普遍的で地味なのかもしれないし、誰も気にしてなかったってことか。
あ、目から水が。
というか元はといえば、啓太が俺をトイレに呼び出してあんな話をしたからだろ!
と、今更どうしようもないことを心の中で嘆く。
啓太は悪くない、だがしかし!
「あのなぁ啓……」
「あっ笹部帰ってきた! エヘエヘ、笹部ぇ〜」
「…………」
啓太デレデレじゃないか。
隠す気無いだろアレ。
*
「はぁ……」
憂鬱だ。
俺は昨日気が狂って、自ら神原のことをご主人様と呼んでしまったし、もう逃げられない気がする。
俺が机に突っ伏し、休み時間なんて早く終わってしまえと不貞腐れていると、俺の隣に誰かが立った気がした。
「……?」
「本条くん」
「……あっ! え? な、七尾くん!?」
「今大丈夫?」
え、これは夢か何かか?
最近誰かさんのせいで疲れが溜まりに溜まっている俺に神様が見せてくれた幻覚なのか?
「? 何、ほっぺたつまんでるの?」
「あっごめん! ていうかどうしたの?」
「うん、昨日途中からいなかったから……どうしたのかな〜って思って」
はああああ可愛い可愛い七尾。
髪サラサラで綺麗だし睫毛はバッサバサだし、間近で見ても美少年だ。
そんな七尾が今、俺だけを見て話してくれてるなんて。
「あ、ああちょっと気分悪くて保健室に行ってて、それだけだよ」
「そうなの? 大丈夫?」
こういうところだ。
こういう優しいところがあるから七尾大好き。
「全っ然、へいき」
まだケツは痛むものの、歩けないことはなかった。
俺は初めて神原に感謝するよ。