□深層喪失
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恐い


「ねぇアルヴィス」


何も考えられない事が


「僕の事が好き?」


怖い


「…す…き?」


思い出せない事が


「うん。好き?」


戸惑うように言葉を返せないオレに、彼は気付いているのかいないのか
腰に巻き付くものの力が強まり、腹部が更に圧迫される。


「君はもう僕のモノだ」


まるで誰かに言い聞かせるように呟く声



おれはかれのもの



彼が言うのなら、そうなのだろう
何故か俺は、すんなりとそう思えた。


だってあたまがまっしろでなにがほんとうなのかわからない



オレは彼のモノ



では、彼の言う『好き』とはどういう意味なのだろうか



オレはカレのモノだからオレもカレがスキ?



俺が忘れている大事な事とはそれの事なのだろうか?


……ちがう


もっとだいじなことを


たいせつなことを


おれはわすれている




.
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