□深層喪失
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不意に、触れていたそれが離れたかと思うと、正面に見えていた彼が背を向け玉座へと向かった。
そして、定位置であるそこに座ると、笑みを浮かべながら手招きをした。

「おいで。アルヴィス」

「……は…い…」


行かなくては


彼に呼ばれると、何故かいつもそんな衝動に駆られる。
逆らう気持ちが沸かない。
早く、彼の傍へ行かなければいけない…と、気持ちだけは逸るが、それとは裏腹に足の動きは鈍くて、オレはゆっくりと彼の元へ足を進めた。
そして、お互いが手で触れられる程まで接近した所で、ぴたりと足を止める。
彼の感情のない瞳が向けられる。
腰に何かが巻き付いたかと思ったら、オレの体は彼へと更に引き寄せられていた。


「アルヴィス」

「はい」

「僕の名前を呼んで」

「ファントム」

「もう一度」

「ファントム…」

抱きつくようにすがりつくように
腹部に感じる圧迫感

柔らかくて

温かくて

でも


なにかとてもだいじなことをわすれているきがするんだ




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