他
□深層喪失
2ページ/4ページ
不意に、触れていたそれが離れたかと思うと、正面に見えていた彼が背を向け玉座へと向かった。
そして、定位置であるそこに座ると、笑みを浮かべながら手招きをした。
「おいで。アルヴィス」
「……は…い…」
行かなくては
彼に呼ばれると、何故かいつもそんな衝動に駆られる。
逆らう気持ちが沸かない。
早く、彼の傍へ行かなければいけない…と、気持ちだけは逸るが、それとは裏腹に足の動きは鈍くて、オレはゆっくりと彼の元へ足を進めた。
そして、お互いが手で触れられる程まで接近した所で、ぴたりと足を止める。
彼の感情のない瞳が向けられる。
腰に何かが巻き付いたかと思ったら、オレの体は彼へと更に引き寄せられていた。
「アルヴィス」
「はい」
「僕の名前を呼んで」
「ファントム」
「もう一度」
「ファントム…」
抱きつくようにすがりつくように
腹部に感じる圧迫感
柔らかくて
温かくて
でも
なにかとてもだいじなことをわすれているきがするんだ
.