□氷点下
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※アニメのクラヴィーア編設定。

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この冷たい手が好きだ。
好きだと気付いたきっかけは、思い出せない。
ただ、それがごく最近になってからだという事だけは断言出来る。
彼と共に過ごす時間が増えた事もあるのだろう。
以前なら
その心と同じように体温の感じない手…というか、『彼』の存在そのものが、嫌悪と憎悪の対象だったのに
今では、その冷たい手に触れられる事がすごく心地よく感じる自分がいる。

彼に触れられると
感じない筈の温もりすら、感じられる気がするから不思議だ。

「君は温かいね」

「生きているからな」

不死の化物となった『彼』
その隣に佇むのはまだ人間の自分。
けれど、確実にこの世界の誰よりも不死に
彼に近い存在の自分。


最近、ただ彼の傍にいて何もする事がない時間、ふと考えてしまう事がある。
これから先、彼と同じ化物になったとして、同じように俺の体も冷たくなるのだろうか。と。
もしそうなら、俺は近い将来彼の体温を冷たいとも温かいとも感じる事がなくなるという事だ。
それは嬉しいようで反面、ひどく哀しい事のような気がして、複雑な気持ちになったりする。

「君に触れていると熱くて溶けるかも」

ふふ。と笑いながらも決して離れる事はなく握られる手。
そこから熱を奪いとられているような錯覚に陥るのは、案外間違いではないのかもしれない。
その証拠に、触れ合う手から彼の体温を感じなくなりつつある。
それはつまり、俺と彼の体温が混じりあっている証拠でもあるから。

見下ろした繋がれた手。
その甲に、ちらりと見えた幾何学的な模様。
微笑む彼

化物と人間の境界線は何なのだろう
姿?
中身?
タトゥが全身へ伸びていくのと同時に、ふとした時に破壊衝動に襲われるようになった。
姿貌は人間なのに
まるで人間の皮を被ったバケモノのようだと思った。
そして、だんだん彼と同じように闇へと…化物へと近づいていくのだと、ぼんやりとながらも自覚したのは、いつになってからだっただろうか?

「でも…きみの熱で溶けるのも悪くないかな」

確実に化物へと近づいているけれど
それでも、人を殺めるのには抵抗がある。
例え、それが憎き敵だとしても

でもそれは
今はまだ俺が人間だからで、嫌悪と罪悪感が残っているから躊躇うのであって、その内、化物として目覚めたらそんな感情すら感じる事もなくなるのかもしれない。

彼のように

彼と同じように

殺戮を繰り返し
血に塗れる生きものに

「アルヴィス」

「何だ?」

「ずっと僕の傍に」

「あぁ」

寂しがり屋の彼

「ずっと…」

そんな弱い彼を見捨てる事が出来ないまま、傍に立っている自分。

「お前の傍にいるよ」

彼と俺は同じ生物だ。
でも、彼は化物で俺は人間で
でも『彼』は誰よりも淋しがり屋で
優しくて
そんな彼から離れられない自分。

人一倍寂しがり屋で触れる事が好きな彼は、化物というよりはむしろ人間に近いのではないだろうか。

「永遠に二人だけで」

「この世界が終わる瞬間まで」

だからこそ、彼は『化物』なのだろう

「アルヴィスは温かいね」

そして自分もいつか

彼と同じ生き物になれる事を
居もしない神へ願うのだ。


「お前もあたたかいよ」

「そうだね」



世界の果てで


何れ訪れるであろう


終焉を恋い焦がれながら



end



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うーん。
もう少し勉強する必要があるなぁ。

アルヴィスがデレすぎるのは、わざとです。

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