Drive−2

□BDショック!4thRomance 2
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10月最後の日曜日の夜、恵はパソコン画面を睨みつけながら 頬と肩で挟んだ受話器相手に、
困った声を出していた。


「1番のポイントねぇー‥‥ベタに言えば、やっぱ、ほとばしる情熱ってヤツ?ぁ?今日のサーキット分?

今送ってる最中だから‥つかさ、そんな事よりアイツ!もー勘弁して欲しいってぐらい喰いついて

来んだけど!ホンキ疲れるっつーの!ハ?筋トレ?無駄にやってるって!ハァーッ。」



恵の参った溜息に、受話器の向こう側からはクスクスと笑い声が聞こえる。


「もー!マジで笑い事じゃないんだって!もぉ‥で、明日は何時なの?ぁ?ウン、解った。ぁ‥あのさ、
結納っていつなのかな?ぇ‥11月3日?そうなの。じゃあね。」


切れた電話の後も、肩で挟んだままでいた受話器を、反対側の耳に持ち替えた恵は、暫くジッと考えてから
ゆっくりと受話器を戻した―――



10月28日 月曜日  21時 羽田空港


「はぁぁぁぁ〜ッ‥‥お腹減ったよぉ。マジで死ぬって。」

到着早々リカは、口の中で悪態つきつつ到着ロビーをフラフラになりながら出ると、駐車場へと向かう。

「ぁ‥居た居た。桜FDも、こういう所に停めてあると 目立つものだねぇ〜。」



目的の車の横に着くと、ドアをノックする様にナビシート側の窓をコツコツと叩き、ハンドサインで

トランクを開けろと、合図した。

カチャッという音と共に開いたソコへ、荷物を半ば放る様に投げやり閉めると、ナビシート側のドアを開け

崩れる様に、シートへと身を沈めた。



「はぁ〜ッ。もうダメ。お腹減って、声も出ないよぅ。ね、メグ、ドライブスルーしてぇー。」

軽く目を閉じ、額に手を当てながらリカが訴えていると、桜FDが軽やかに発進する。


「何が良いんだ?」

「何でもいいよ、この際。1番近い‥――」


何か声が変だよ、メグ?

と、ボヤけた頭で思った時 ほんのりとアクアマリンの香りが、リカの鼻先をかすめた。


「ぉわッ!な‥ッ‥け、け‥け、け‥ッ!」


言うと同時に、ドアへとへばりつき目を見開くリカの姿に、ステアリングを握っていた啓介は、
深く溜息をついた。


「あのなぁー‥俺は、バケモノかよ?!」

「ぁ‥あの‥メグ‥は?」


啓介の軽い口調とは逆に、リカは、窓に背を貼り付けたまま ガクガクと震え出しそうになるのを堪えながら
やっとの思いで、尋ねる。


「どーしても手が離せない仕事が、急に入ったんだと。ホラ、ちゃんと座って!シートベルトしろよ。
見つかって点数カウントされんのは、俺なんだぞ。」


そう言うと啓介は、へばりついた格好のリカの腕をグイと引っ張り、信号待ちで止まった車の中、
彼女の身体に近付いて、ベルトを締めた。


アァ‥目眩ガシソウダ―――


触れそうで触れない その距離の中 2人の心が同時に叫ぶ。



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