Drive−2

□BDショック!4thRomance 6
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ハッと目を開けると、高い天井がボンヤリ滲む。

うたた寝してたらしいと気付いたリカが起き上がると、支配人が掛けたであろう毛布が目に入った。

ソレをキチンとたたんでリカは外に出て、新年の空気を胸一杯に吸い込むと暖気したレヴィンに乗り込む。


春名の中腹あたりを下ってゆく途中の、少し上りになり、その後ガクンと急降下する坂道のエスケープ

ゾーンに車を停めるとリカは、白い息を吐きながら外へ降り立つ。


見上げたソコには星がキラキラと輝き、美しい夜空は少しずつ薄く、明るくなってきていた。


「もうすぐだ‥‥。」


そう呟くとリカは、両手の人差し指と親指をくっつけ四角を作ると、ソコから坂の上に出来た地平線を覗く。

暫くするとアスファルトの水平ラインから、今年最初の太陽が顔を出し始めた。

ソレは、ゆっくり、ゆっくりと、まばゆいばかりの光を放ち昇る。



「キレイ‥――」



そう思った瞬間、リカの指先ファインダーの中に 雪煙をあげ、1台の車が朝陽をバックに美しいラインを

描きながら入って来た。

それはまるで、映画のスローモーションでのワンシーンの如く、強い印象を与える程の姿だった。


「け‥啓介‥‥?」


リカの中で『何か』が、パリンと乾いた音を立てて壊れる。



――このコースに啓介の黄色いFDが駆け抜けるの、きっとカッコイイと思うよ――



な‥何だろう、今の感覚? それにあのエンジン音は?

FDがすぐ下のコーナーでUターンし、リカのレヴィンの後ろに止まると、高橋啓介が降りて来た。


「ギリギリセーフだな。」

「え?」

突然現れた啓介に、リカは少しうろたえながら目を伏せた。

「初日の出だよ。ココでちゃ〜んと拝んでおかねぇーとな。」


そう言うと啓介は、パンパンと拍手を打ち神妙な面持ちで目を閉じる。

その傍でリカは、そっとFDに近寄るとエンジン音に耳を傾けていた。頭の中がフル回転で『何か』の信号を

送ってきている。あと少しでキャッチ出来そうなのに、何かが怖くてうまくゆかない。



「コイツすごく良いよ、ゼロワン。」

背後から啓介の声がした。

「ゼロ‥ワン?」

「あぁ。RK-01エンジン。まるで俺を引っ張り上げるみたいに、限界の先を見せてくれやがる。」

そう言うと啓介は、不意にリカを背後から強く抱き締めた。


「な‥‥ッ?!」

「戻って来い、リカ!お前の居場所はココだ!この俺の腕の中だ!怖がらずに戻って来いッ!」



「私の‥居場所‥――」


視界がボヤけて、段々と暗くなってゆく。

リカの身体はガクンと力が抜け、そのまま人形の様にパタリと不自然に倒れると、気を失ってしまった。



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