Drive−2

□BDショック!4thRomance 3
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December  ――別れの走り――



――正式なチーム名は『チームDream of R』略して『DR』です。



涼介の声が響き渡ると同時に、眩しい程のフラッシュがアチコチでたかれている。

荻原本社ビルで行われた記者会見には、日本のモータースポーツでは今までに例をみない程の注目度を

あらわすかの様に、溢れんばかりの記者とカメラマンで殺気立ほど ごった返していた。



「ふぅ〜ん‥『チーム・涼介の夢』で、略して『DR・ドクター』ってトコが、泣かせるわねぇ。」

会場の端っこの壁にもたれて立っていたリカは、ボソリと独りごちった。

会見の席には、涼介をトップに啓介・拓海・メグ・延彦・史浩・ケンタ・恭子が参加している。

ジャンプしても、その華々しい席など見えるはずのない様子にリカは、深く溜息をつくと

勇斗の居る専務室へ向かうべく、踵を返した。



勇斗の居るフロアは、35階建てビルの32階にある。

会見会場の15階から、上りのエレベーターに乗ると 誰も居ないほど静かな32階へと降り立つ。

専務室へ向かう途中、ガラス張りになった向こうに緑をふんだんに使ったテラスを見つけたリカは

何気なく硝子のドアを開け、テラスに出ると小さなテーブルセットの、テーブルへと腰掛けた。

椅子ではなく、テーブルに座ったのは、そうする事で高層ビルの前に広がる景色が良く見えるからだった。



啓介と逢わなくなって、もう何日経つんだろう。

何の約束もないまま独りで過ごす日々は、恐ろしいほどの不安との戦いだ。

今日は‥12月10日。それじゃ‥3週間も逢ってない計算になる。

まだ3週間? もう3週間?

段々と、自分の気持ちでさえ掴めなくなってくる。

唯一入手出来るものと言えば、レースの記録映像のみ。

その唯一の映像の中、啓介の隣にはいつも恭子の姿があった。



「何をしている。」



突然声がして、リカがビクッと身体弾いて振り返るとソコには、勇斗がテラスに足を踏み入れている姿があった。


「遅いから様子を見に来てみれば、こんな所に。」

言いながら勇斗は、フと自分の背後に視線を感じたが、ソレを無視してリカの傍へと向かう。


「ぁ‥ごめんなさい。下で人酔いしたんで、此処で休んでたんです。」

急いでテーブルから降りようとしたリカの肩を、何故か勇斗は押し留める様に右手で掴む。



「いいか、この荻原に居る時 そんな顔をするな。俺とお前の一挙手一動を、表情を、社員全員が

それこそハラハラしながら見ているんだ。この提携がダメになったら、婚約破棄でもしようものなら

リストラか?削減か?と、あらぬ噂はアチコチに流れピリピリしているんだ。それに拍車をかける真似だけは

絶対にするんじゃない。」



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