Drive−2

□BDショック! 4thRomance 5
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「ぉ‥お前、何やってんだ?」

黒のランニングシャツに、黒の短パン。汗まみれになっているリカの姿を啓介は、不思議そうに見つめた。


「筋トレ‥だけど。」


コーヒーメーカーから少々煮詰まったコーヒーを入れながらリカは、腰を下ろした啓介の前にカップを置くと

自分は早速、キッチンで薬を飲んでから啓介の向かいの椅子へと腰掛ける。


「まだ調子悪そうなのに、何で筋トレなんかやってんだ?」

「春名へ向けての体力調整‥って、とこかしら。無様な走りだけは、したくないし。」

「ムリすんなって‥。」


言いながら啓介は、テーブルに置かれたリカの手の上へ自分の手を重ねた。


「な‥‥ッ?!」


驚いたリカはギョッとした様に目を剥くと、急いで自分の手を引っ込める。


「なッ‥何やってんのよ!」

「なぁ‥リカ、俺とお前がいつ出逢ったのか思い出してくれたか?」


リカが手を引っ込めた瞬間、ハッとするほど表情に陰がさした啓介が、悲しそうな目でリカを見た。


「何言ってんの?ぁ‥アナタちょっとおかしいよ!もう帰って!」

小さく叫ぶとリカは、ギュッと眉根を寄せ胸元のシャツを掴んだ。



「分かった!帰るから、興奮するな!落ち着いて、ゆっくり呼吸するんだ。しっかり吐け、全部吐いてから

ゆっくり吸うんだ、そう。悪かったな、変な事言っちまって。ただ、これだけは言っとくぞ。

リカが戻って来ないなら、俺の心も一緒に心中する。お前は俺の全て‥なんだから。」



「あなた‥‥何を‥?」

リカの頭の奥がまた、ズキンと鈍く痛む。


「あぁ、そうだ。この手紙を岩瀬から預かってる。お前に、だと。それじゃ、帰るな。」

啓介はリカの手を取り手紙を握らせると、何か言いたそうに口を開いたが、何も言わず帰って行った。



彼は‥ 一体何が言いたかったんだろう。

なぜ私の事を『リカ』と呼ぶのだろう。

私が戻って来ない?

お前は俺の全てだなんて どうしてあんな悲しい顔して言うんだろう。

私と彼の間に 一体何があるというのだ?

頭痛が邪魔して 何も考えられない。



ギュッと手を握り締めた時リカは、手紙を持っている事を思い出した。


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FDに乗り込んだ啓介は、ステアリングを握った姿勢で深い溜め息をついていた。

女医は、少し記憶を揺さぶる様な話を矢継ぎ早に出して刺激してみろ、と言ったが


「俺には出来ねぇーよ。」


思い出すのが嫌で身体までダメにするほど苦しんでいるのに、もっと苦しめてムリヤリ戻せって言うのか?

そりゃ‥戻って欲しい。

もう一度、抱き締めたい。

だけど

戻って来ても、俺はリカの視界に入ってないかもしれない‥‥と思うと



それが

何より


――怖い…。



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