Drive−2

□BDショック!4thRomance 6
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まるで深海にでも潜ったみたい

生きてる

だけど 目も耳も機能してない

今まで蓋をされていた中身が 一気に飛び出して

‥‥いや 本来あるべき記憶として帰って来たと言う方が 正しい感覚だ

瀬名巳の父に手を引かれ母の元から連れ出された時

私は たった1人の肉親に しかも母親に捨てられた様な気持ちがした

きっと今もそれをどこかに抱えていて 寂しい 悲しい 誰でもいいから愛して欲しいと思っている

小さな9歳の私が泣いていたのかもしれない

こんなにも私を愛してくれる人に囲まれていた事に 今頃気付くなんて

あぁ それにしても こんなに深い海の底で ぐっすり眠れて心地良い



「良い‥‥ィ‥‥痛ッ!」



突然襲いかかった痛みにリカは、深い海の底から一気に引き上げられた魚の様に、口をパクパクさせ目覚めた。


「あー悪いなぁ。痛いのは注射だ。毎日打ってたが、今日に限って痛いか?」


見ると、綾子がリカの右腕に血管注射をしているところだった。よく見渡せばソコは、3人部屋の病室の

ようだったが、リカ1人だけだった。それにリカの動きに合わせた様に、何だが金属音がする。


「この部屋、私1人?」

「そうだ。今、この病院に居るのはリカともう1人だけだ。」

言いながら綾子は、ゆっくりと注射針を抜く。

「え?2人だけ?!他の患者さんは?」

「皆、高橋医院へ転院した。この建物も、6月一杯で取り壊しだからな。」

「どうして?」

「この土地を売ったからだ。」

しゃらっと言い退ける綾子に、リカは驚いて目を見開いた。


「売ったぁー?!何でよ!地上げ?区画整理対象?マンション建てるとか?!」

勢い込んで尋ねるリカに、綾子は思わず身体を引く。


「ぃ、いや、個人が買ったぞ。」

「えーッ?!売りに出されてたの知ってたら、私が買いたかったよー!でもセンセ、病院辞めるの?」


起き上がろうとするリカをやんわりと制した綾子は、柔らかく微笑んだ。

「売った金で、高橋医院に別棟兼自宅を増設する事になってな。7月からソッチに移る。」

「別棟って‥‥。」


「女性専用の、特別病棟だがな。」

苦笑い浮かべた綾子の様子をジッと見ていたリカは、静かに微笑む。



「綾子先生‥お母さんの近くに行くんだ。良かったね。」


「お母さんって‥リカ‥‥お前‥記憶‥‥?」


驚いた綾子だったが、固まった様に身体が動かず ただ、目を見開きリカの顔を見つめただけだった。



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