Drive−1
□BABY,D-ショック! 3
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「ごめんなさいね、時間取らせて。せっかくの夏休みなのに、彼女や彼氏に悪いから帰ろうか。」
まだ青白い顔色だが、笑顔でリカが呼びかける。
「だぁーかぁーら!俺は今はストレートだっ!!お前等のせいでヘンな噂が流れて迷惑してんだぞ、コラッ!」
「そぉーお?今の若い女の子は、ゲイに寛大らしいよ。」
「違うって言ってんだろ!ったく、彼女もいないっていうのに…。」
「へ?!何? 彼女もいないの?」
「今はコイツで頭が一杯なんだよ。」
啓介は、FDをコツンと叩く。
「ハァーッ、ここにも女に乗らずに車に乗ってイッちゃう男が1人‥か。」
リカは頭を振りながら、体をブルッと震わせてナビシートへとすべり込む。
「悪ィかよ…。」
啓介は タバコを消して乗り込むと、ゆっくりと発進させた。
「ま、でも、そうだよね。要は車以上に『イケる相手』にめぐり逢っていないだけ、だよね?お互いに。
あーそう考えると、やっぱ逢いたくなっちゃったなー。」
「?誰に?」
啓介の問いには答えず、リカは携帯を取り出しプッシュした。
「あ、メグ?ゴメン、やっぱさ私のダーリンに逢いに行くよ。お腹も減ったんでヨロシクね。
綾子さんに1週間SEX禁止って言われたから、ダーリンと攻めなきゃストレス溜まるじゃん。今から行くから。」
「お、お前〜〜〜ッ、何て会話してんだよ?!」
「へ?私の愛するダーリン‥あぁ、車だよ!私も車でイケるくちだからね。」
「車って、ウィンダムじゃ?」
アングリと口を開ける啓介に、リカはニッコリ笑って答えた。
「ヤダなぁ、あれはタダの自家用車。走るのは別。」
「うそぉ;」
「あ、ここでいい 止めて。」
車を降りたリカは、ナビ側の窓から啓介に声をかけた。
「色々、本当にありがとう。涼介の事で あなたが気に病む事は全然ないから。涼介とは、もうオシマイになるし。
逢う事もないと思うけど‥拓海を、藤原拓海をヨロシクね、私の大事な弟みたいな子だから。」
それだけ言うと軽く手を振りリカは行ってしまう。初めて見た時とは違うスーツとハイヒール姿で。
さっきまで自分の隣にいたハズなのに、遠くに感じた。
「何、考えてんだ 俺…。」
啓介はハンドルを握ったまま下を向き、ため息をつくと タイヤをきしませ夜の街へと消えた。