Drive−1

□BABY,D-ショック! 4
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「終わった。」


怪我や事故がない事を確認したリカは、とりあえずホッとした。

「終わったって どういう事だよ?!」 

堪り兼ねた啓介が、低く唸りながらが尋ねる。


「拓海が たった今、エンジンブローしたの。寿命だったのよ。でも、きっと拓海は自分のせいだと思ってる。
私もそうだったから・・・。」

そう言いながらリカは右手につけているブレスレットに そっと触れた。


「・・・お前さ、この間のパーティの時も思ったんだけど その、シミったれたブレスレット、
もっとイイのにすりゃーいいだろうに。」

「これは大事なモノなの!知らないクセに、シミったれてるなんて言わないで!!」


リカが本気で怒ってるのを感じた啓介は、ちょっとビックリした。

「あ・・・ゴメン。」 

言いながら啓介は、心の中で思った。でも、兄貴からのプレゼントじゃないよな?安っぽいから・・・。


リカは、拓海とハチロクの傍に 1台のキャリアカーが止まったのを確認し、帰ろうと一歩踏み出したが、
そのまま耳だけをそばだてる。

ふてぶてしい生意気なエンジン音が近付いて来る・・あれは・・・


涼介と啓介、そしてレッドサンズのメンバーが居るその場に、メタルブラックのジャガーが滑り込んで来た。


「ブラック・・パンサー。」 

涼介の呟きに、周りがざわめき出した。


「ゲエエッ・・!地獄の御使い 黒い彗星、ブラック・パンサーだってよぉ!!」


騒ぎ出すレッドサンズの面々の中、ジャガーのドアがゆっくり開き、中から 長身な体を品のある黒いスーツで
粋に包んだ男が出てきた。夜だと言うのに黒いサングラスをかけていても、色男である事は雰囲気から伺えた。


「高橋涼介さん、来週金曜22:00 この赤城峠でのバトルを申し込みます。」

「ブラック・パンサーのバトルは、2ヶ月に1度のハズでは?」

「例外もあります。」 

男は何食わぬ顔で平然と言い放つ。


「俺達は地元じゃバトルしねーんだよ!」 

啓介が声を荒げたが、黒づくめの男は眉1つ動かさない。


「そういう建前を挙げて逃げるのは、関心しませんね。」

男が唇の端に、ニヤリと挑発的とも見える笑いを浮かべた。


「なにぃ・・!」 

今にも掴みかかりそうな啓介を、涼介がやんわりと押さえる。

「せっかくだ、お受けしよう。」

「兄貴!!」

「明後日から、此処のコースを開放しますよ。明日はバトルがありますので。」

「心配後無用。我々は、初見でやるのが流儀ですので。では、失礼。」


それだけ言うと、男は優雅な身のこなしでジャガーに乗り込み去って行った。


「初見でやるだと?ウソだろ・・?」 

呆然と立ち尽くす面々をよそに、リカは黙ってその場を去って行った。  


月曜の早朝には、全ての走り屋に情報が飛んでいた。土曜日のハチロクのエンジンブロー、
日曜日の涼介VS京一の、鮮やかな涼介の勝利。

そして、今週金曜のブラック・パンサーvsREDSUNS。
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