Drive−1

□BABY,D-ショック! 5
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――ハァーッ・・何かもうダメかな。気が滅入るなぁ。リカは拓海の方を振り返り、ゆっくりと近付いた。


「拓海、ちょっと座ろうか。」 

拓海は黙ったままリカに並んで歩く。


啓介の隣のテーブルにつくと、リカはとりあえずタバコに火を点けた。

「許せない?援交の事?」 

ゆっくりと煙を吐きながら、リカは拓海の顔を覗き込む。

「当たり前だよ、汚いよ!軽蔑する。」 

両手をギュッと握り締めると、拓海は俯いた。

「そっか・・・。じゃ、拓海は私の事も軽蔑してんだ。」

「何でそうなるんだよ?」 


拓海が怪訝そうな顔をして、リカを見た。

「なつきちゃんは 拓海が目で見た部分だけで言えば、間違って見えたかもしれない。だけど、拓海は
どれだけ理解してあげようと話を聞いたの?彼女は、初めから援交する目的で あのオジサンと
付き合ったワケじゃないみたいだよ。」


「え?」 

拓海の表情が、少しだけ怯む。



「純粋に好きになって・・ところが向こうは、お金を渡してくるようになった。何かヘンだと思いながらも
ズルズルきてしまった。だけど、拓海を本当に好きな気持ちのおかげで、目覚める事ができた。
いくつも大切な物を失っても、最後の拓海だけは失いたくなかったから、最後に踏み止まった。 
じゃ、私はどお?涼介が他の女好きだって知ってて、その女が涼介の手に入らないスキをついて・・自分の中の
『純潔』を生贄に、涼介を好きだって気持ちを悪魔に売り飛ばして、彼の体だけ手に入れた。

どんなに心を求めても、手に入らない淋しさを埋める為に、いくつもの男を渡り歩いた。
私は、踏み止まる事ができないまま 踏み外してしまったんだよ。だけど、そうするしかなかった。
そうするしか・・援交よりタチ悪いよ。」


拓海は 苦しそうに顔を歪めるリカを、辛そうに見つめた。


「これ・・拓海がくれたブレスレット。確か私が3度目にガードレール突き破って、転落事故で入院した時
くれたやつだよね。どうしてだった?」

「それは・・もうあんなムチャな運転して欲しくなくって。俺、もうあんな思いしたくなかったから
これを見る度に思い出して欲しくって、お守りの代わりに渡した。」


「そうだよね。一生懸命バイトして、くれたんだよね。だけど拓海、あんたは・・あの時のアンタは
1つだけカン違いしてるよ。私は別に自殺行為だとか、死んでもいいとかって思って あんな事故
やった訳じゃない。限界の向こうにあるものを見たくって、知りたくって必死だっただけ。
でなきゃ、同じコーナーで3度も落ちないよ。」


リカは自嘲気味に笑うと、新しいタバコに火を点ける。


「今の拓海ならもう判るでしょ。あのガムテープデスマッチの時、ハチロクのオシリをガードレールにぶつけて 
その反動利用してまで、コーナーの突っ込みに更なる加速をつけた。でも一歩間違えたら、突き破って転落。
でも本人は、例え突き破ったとしても それは大した問題じゃない。」


「・・・・。」
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