Drive−1

□BABY,D-ショック! 8
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ヒルクライム 啓介vs恭子がスタートした。


「ねぇ、ケンタ。」 

リカが そっとケンタに声をかけると、何ですか?と顔を向けた。


「あのさ、このバトル引けたら コッソリ私を、神牟田岬の近くまで送ってくれないかな?ココまでは
仕事の都合で、タクシーで来ちゃったから 足がないのよ。」


「いいッスけど・・大丈夫なんですか?受けて立って?聞くと、かなりヤバイ所だって。」

「送ってくれるの?くれないの?」

「送りますよぉ。」 

ケンタがむくれた顔をしながら、大儀そうにため息をついた。

「他の人には、言ってないわよね?」


「史浩さんが・・どーしても 打ち合わせしてた時だったんで、チラッと聞こえたみたいだったんですけど、
テキトーに誤魔化しときました。他は誰も知りません。」


「上出来、サンキュ。」 

リカは人の輪から離れると、タバコに火を点けた。

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啓介は、このヒルクライム、数々の課題を体得する事と 頭を使う事でこなし、前半苦戦したものの勝利を収め、
また拓海も、ダウンヒルで70%程の力で ラクに勝つ事ができた。そして、どさくさに紛れリカは
ケンタ共に、車で消えた。


「あの。」 

恭子が 人波をかき分け、啓介の傍にやって来た。

「色々本当にありがとうございました。車の事とか。」


「それか。そんなの、走り出す前に終わってる話だろ?俺もお前には感謝している。今日のバトルで
新しい発見が、幾つかあったしな。お前、凄く上手いし 速かったよ。始めにキツイ事いったけど、取り消す。
悪かった。それで『おあいこ』って事にしようぜ。」


タバコの煙をくゆらせながら、啓介が優しく微笑むと、恭子は堪えきれずに啓介へ にじり寄った。

「あの!わっ・・私、こんな気持ちになった事・・好きです!貴方の事。こんなに好きになったの・・
初めてで・・・」


「・・・タマタマお前の窮地を助けたのが俺で、同じ車でバトルしたから、気持ちが高ぶってるだけだ。」

「そんな事!!」


「俺は・・どうしようもないくらい惚れた女がいる。お前、今の状態で 別の男にコクられたら、
何て答えるんだ?」

「それは・・・」


「お前の答える言葉が、俺の お前に対する答えだ。」 

短くなった煙草を足で踏み消すと、啓介は踵を返した。

「待って!絶対に振り向かせてみせる!リカさえ・・あの女さえ、泣きを見せてやれば・・ッ!」 


恭子は、怪しげな笑いを口の端に浮かべて、啓介を見た。

「?! 何言ってんだ?お前?」

恭子は啓介の問いに答える事なく、FDに乗り込むとスキール音を残し去って行った。

「啓介、やっかいな事になった。」 

涼介が、顔をこわばらせて 啓介に声をかけた。

「やっかいな事?」

「リカが、あの恭子って女の とんでもない挑戦を、受けたらしい。」


「ケンタは何でもないって言ってたが、いつの間にかケンタとリカちゃんの姿がないし、絶対 神牟田岬に行ったんだ。」 

史浩が、涼介と啓介の顔を交互に見た。
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