Final-Drive
□BDショック! Final Romance 3
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「リカさんッ!!どうして‥どうして、そんなになってまで走るんスか?!啓介さんの事なら、もうイイじゃないですか!
あんな‥アッサリ他の女の処へ行く程度だったんですから!」
ケンタが冷たいタオルを渡しながら、リカに詰め寄る。
「私は‥ただ‥自分自身の為に走る、だけだよ。」
リカの言葉に、ドアの陰の人物の肩がピクリと撥ねた。
「なぜ‥何の為に走るのか‥なんて聞かれても、私は、走り屋だから‥そこに山があれば、道があれば
コースがあれば、走るだけ。自分の走りに対する意地やプライドが、どこまで通用するのか
限界の先にあるものが見たくて、掴みたくて走るだけ。それに‥皆よく言ってるじゃない?
走り屋なら、挑戦されたら受けて立つのは当たり前――だって。自分にプライド持て、ってさ。」
「‥‥‥。」
ケンタを始め、その場に居る全員が黙り込む。
「私は、自分の走りと‥走りの楽しさを教えてくれた父や仲間を信じているから、大丈夫。‥だけど、今日のこの走りは
もう1つ‥、啓介と過ごした日々や、彼への想いを‥心の深い場所へ封印する為にも、死ぬ気で走る。」
「リカ‥‥。」
恵が、泣きそうな顔でリカを見た。
「苦しいし辛いけど、現実からはもう‥逃げない。」
「だが、レース中に発作が出たら…どうするんだ?」
涼介が厳しい表情で、リカの両肩をギュッと掴む。
「その時は、その時。怪しいと思ったら、インカムで伝えるから。さ、私達は午後のスタートをしっかり準備しよう。」
ドアの陰の人物の身体が小さく震え始めた時、その肩にそっと触れる大きな手があった。
「ぁ‥アンタは‥?」
「メール見たんだ。」
「メールって‥どうして?!」
「2〜3ヶ月ぐらいなら、君の希望を聞き入れられそうだ。但し、コッチの条件を呑んでくれるなら‥だが。」
「条件‥?」
「ま、観戦の席で、ゆっくり話そうじゃないか。」